296.湯之沢城防衛戦3


 会議の途中、敵の強襲を受けたため、3人はすぐに自分の直属の部下達がいる場所へと戻っていった。


 エルノイド大佐が持ち場である裏門から少し城側に上った位置にある仮設指揮所に入る。

 ここは彼の直属の海軍特殊部隊チーム4とこの城の守備兵達(100名ほど)が守備している。


 エルノイド大佐が指揮所に入ると中にいた幕僚たちは全員立ち上がり敬礼で出迎えた。

 ここにいる幕僚たちは普段直接現場に出ないため軽装でいるのだが、ここが最前線となってしまった今、全員がボディーアーマーを着用し、MP7A1とVP9で武装している。

 そんな彼らを一瞥した後、彼らに座るよう促す。


 「ご苦労、楽にしてくれ、中佐、敵の様子はどうだ?」


 エルノイド大佐は指揮所の中心にある机に置いてある地図を見ながら、副指揮官である中佐に現状報告を求めた。


 「夜ということもあって敵さんはこちらにゆっくりと進んできています」

 「さっきまでの勢いはどうした?ここにきてビビったか?」


 「ハハッ!それだといいのですが……、ここまで恐ろしい速さで進撃をしてきた敵は恐らく騎馬隊でしたが、それは既に第4武装偵察連隊第一中隊によって殲滅されているので、今ここに近寄ってきているのはその後ろについてきた別部隊だと思われます」


 「ということは、騎馬隊の突撃は陽動だったということか?……、規模は?」


 「恐らく2個中隊はあるかと……」


 「ふんッ!その程度か、なめられたものだな、皆配置に就いているか?」


 「はい、皆今か今かと待っているところです」

 

 「そうか……、中佐、ここのことは頼んだ、この城の守備兵には一歩も動くなといっておいてくれ」


 「大佐はどちらに?」

 

 「俺は前線に出て陣頭指揮を執ってくる」

 

 「……、了解です、大佐、お気を付けて」

 「ああ」


 そういうとエルノイド大佐は指揮所に置いてあった自分のHK416CとVP9を持ち、最前線へとむかった。


 裏門は櫓門という門の上部に櫓をのせた構造になっていて、エルノイド大佐はその櫓部分にきている。

 この櫓門の屋根の上にはM240Bを運用する2組が待機しているようだ。


 「どうだ?」


 エルノイド大佐は櫓の中で監視任務に就いていた兵士に敵に聞こえないように小声で話しかけていた。


 「見てください、あの岩の裏にもう6人ぐらいが身を隠しています」


 見ると門から出て30mほど離れた位置にある岩陰に既に敵が潜んでいた。

 門の外は比較的急な坂になっており、高い位置にある櫓からだと敵の動きはまるわかりだ。

 さらにこちらは暗視装置を皆つけているのでなおさらだ。


 「おい、あれはなんだ?」

 「……、恐らくあれはゴーレムかと思われます、あの感じだとどこかに召喚術師がいるようですね」


 しばらく外を観察していると、徐々に敵の本隊らしい集団がこちらにゆっくり近づくのが見えて来た。

 そこには赤い一つ目を仄かに光らせる巨大な人型のモンスターが二体混ざっていた。


 「もしかして、あいつらちょっと前に第一海兵大隊を襲った奴らじゃないか?」

 「確かに、情報にあったゴーレムに間違いなさそうですね」


 「となると、銃弾はあいつには効かないんだったよな?」

 「でしたら、ミスティア隊にお願いして81㎜迫撃砲でも撃ってもらいましょう」

 「そうだな、そろそろこちらも“ご挨拶”しておかないと失礼だよな?」

 「ええ、そうですね」


 エルノイド大佐は場の空気が重いことを気にして軽いジョークを言って場を和ませる。

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