265.十史郎と大隊長
第一武装偵察大隊は後続の本隊の到着を見届けると、すぐに次の任務である大和城への偵察へ向かうことにした。
この偵察には三つの任務が含まれていて、一つ目は車両が通ることができる道があるのか、二つ目は敵性勢力が道中に待ち伏せできそうなところはあるか、三つ目は大和城周辺にMV-22が着陸できる場所はあるかというものだ。
一つ目は特に重要で、あらかた航空機による上空偵察を行っていてあらかた目星はつけているのだが、やはり実際通ってみて戦車や他の装甲車が展開しなければいけないとなった時に通れるかどうかを確認しておいた方がいいからだ、もしそれで通れない箇所(特に河川を渡るための橋梁)があった場合は速やかに工兵部隊が展開し仮設の道路等をつくらなければならない。
細長い車列で進む第一武装偵察大隊は、縦須賀港から出て30㎞地点にある縦浜の宿場町へと入っていた。
住民たちは物珍しい視線や何か怯えるような視線など様々な目線でこちらを見て来ていた。
町のそこかしこに狸や猫、兎などの獣人の姿も見られ、亜人と共存している様子もうかがえる。
家は全て木造で高さは大きくても6mぐらいのものが多いのでAAV7A1の高さ約8m(だいたいビル3階の天井)を超えることはないので、AAV7A1の上からであれば町を見渡すことが出来、さらに全ての建物の屋根を見ることができるので、狙撃やアンブッシュの警戒がしやすい。
とはいえ、聞いていた情報に反遠城派の暗躍などによる治安の低下が入っていたので何かしら潜んでいる可能性があるので、道案内をしてくれている伊東十史郎とその配下に少し先回りして見回ってくれていた。
「大隊長!先行している十史郎さんのいる方向から何やら剣がぶつかり合う音と怒声が聞こえています!恐らく何者かと交戦を開始した模様!」
町に入ってしばらくすると、車列の先頭の第一中隊A(アルファ)小隊長から、恐らく先行していた十史郎達が何者かと戦闘を開始しているという通信が入ってきていた。
「了解!すぐに応援に向かえ!私もすぐに現場に向かう!」
時は少しさかのぼり、第一武装偵察大隊の前を十史郎は自身の配下の騎馬隊で縦浜の町を後少しで出ようとしていた。
「止まれ!!」
「何奴!」
十史郎とその配下の前に突如として、抜き身の刀をこちらに向ける集団が現れた。
「貴様らか、この出国(いずるくに、出雲国の別称)に異国の人間を招き入れた不埒者は!」
「待て貴様ら!彼らは帝様のご客人であるぞ!」
彼らはこの地に異国(コンダート王国)から来た人間に対して快く思っていない様子だ。
「黙れ!この地に招き入れた罪ここで償ってもらう!野郎ども!やってしまえ!」
どうやら、彼らは十史郎の話に聞く耳を持つ気はないようだ。
気付けば背後にも回り込まれていた。
「ええい!この狼藉者め!であえであえ!」
十史郎の配下達は馬から降り、刀を抜き放ちこれに応戦した。
第一武装偵察大隊の先頭の第一中隊A小隊が到着すると、すでに十史郎とその配下達は襲撃者たちと乱戦状態に入っていた。
そして、すでに何十人もその場に倒れていた。
十史郎達は何とか善戦しているものの、量に勝る襲撃者側に徐々に押されていた。
A小隊は応援に向かおうにも乱戦になっているため、こちらから援護射撃をすることをためらっていた。
しかし、そうしているうちに十史郎の配下にも負傷者が出始め、さらに情勢が不利になり始めていた。
そんな状況にしびれを切らしたA小隊の小隊長は、大隊長に攻撃許可を求めていた。
「大隊長!十史郎さんの配下の方に負傷者が出ているようです、このままではやられてしまいます!我々も加勢してもよろしいでしょうか?」
「構わん!ただし乱戦状態に陥っているようだろうから射撃は禁ずる……、意味は分かるな?小隊長?」
「はっ!我々も元騎士団の一員……、着剣し応戦します!小隊の何名かは私物の剣を持ってきているのでそちらを使わせてもよろしいでしょうか?」
「許可する、くれぐれも怪我の無いように、それと負傷者はすぐに衛生班に収容させろ」
「了解!……、着剣、抜刀用意!」
「「「了解!」」」
その掛け声に隊員たちは持っていたHK416A6に銃剣を付け、またある者は私物の片手剣を引き抜き戦闘態勢に入っていた。
「突撃!!」
「「「うおぉぉっ!!」」」
掛け声とともに突っ込んでいった。
突撃してきた隊員たちによって襲撃者たちは浮足立ち次々と討ち取られていった、そして形勢は完全に逆転し、襲ってきた敵はその数を
急激に減らしていった。
「はぁ、はぁ……、おい!十史郎といったか、最後に一騎打ちを頼みたい」
「いいだろう!その前に名を聞こう」
「半田八兵衛だ」
「何!半田の……」
「いざ、尋常に勝負!」
「来い!」
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