246.動く無人島2
「おい!お前たち!こっちへ来い!」
「はっ!ただいま!」
水たまりをしばらく観察していた隊員たちは、少し離れたところから聞こえて来た呼び声に反応し、すぐにその声のする方に向かっていった。
そこには声の主である自分たちの所属する小隊長が、人二人が並んでギリギリ入れるぐらいの大きさの洞窟のようなものが口を開けていた。
覗いてみても中には光が入り込まないようになっているため、こちらからは中の様子をうかがい知ることができない。
「分隊到着しました小隊長!……、これは……洞窟ですか?」
「ああ、多分な」
「もう入られましたか?」
「いや、まだだ、こういうところだからこそ小隊全員で確認したほうがいいかと思ったんだ」
「なるほど、わかりました、とりあえず入口からライトで中を照らしてみましょう」
きっと小隊長はビビッて中に入らなかったんだと内心思いつつ、そんなことをおくびにも感じさせない涼しい顔で、今まで冒険者として活躍してきた初老の分隊長は敵性生物がいることを想定してHK416A6につけたウェポンライト(Surefire製)で洞窟内を照らした。
「奥はふさがっているのか?」
初老の分隊長がウェポンライトによって照らし出された洞窟内部は、比較的すぐの場所で行き止まりのようになっていた。
「おい!誰か見に行ってくれんか?念のため4人で行ってくれ」
「はっ!では我々が行ってまいります!」
「うん、任せた」
初老の分隊長の下にいる若い隊員たち4人が潔く名乗り出て謎の多い洞窟に向かってくれた。
洞窟に向かう4人は、さすがにこの後敵性生物や若しくはそれに近しい何かがいであろうと予想し銃のプレスチェックを行いお互いでそれを確認しあった後、クリアリングをしながら慎重に洞窟へ入っていった。
そんな4人は洞窟に入ってから間もなく、すぐにこちらへ引き返してきた。
「小隊長!洞窟内に敵影無し、内部構造も特に変わった様子もありません!」
「そうか、ご苦労……、いったい何だったんだ?」
この後別の小隊も同じような洞窟をもう一つ見つけていたようで、こちらも同じように中には何もなく短い洞窟というより洞穴のようなものが発見されていた。
これで島内には二つの洞穴が確認されていた。
「中隊長、ここは未開拓の無人島のようですな」
「そうか」
「しかも、ここは動物もいないだけでなく実のなる植物も存在しないという状況からみるに、ここの島は人が住むには適していないように見られます」
「そうだな、他の報告では農地開拓をするうえで大事な土が無くてほとんどが岩や砂利でできているようだから、これでは入植も厳しいだろう、よくて海軍の中継基地ぐらいの利用価値しかなさそうだな……、とりあえずこのことを本部に報告して、我々は帰還することにしようか、中隊を浜のLZに集合させろ」
「了解!」
あらかた調査し終えた中隊は本部に報告を済ませ帰途に着くことにした。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
中隊全員が海岸についたその時。
島が大きな音とともに“動き始め”、隊員たちは激しい揺れに襲われた。
「なんだ!?どうした!どうなってる!?」
「わかりません!各隊状況報告!」
突然の揺れにパニックに陥った中隊だが、何とか中隊幹部たちは冷静に状況を整理しようとしていた。
「報告!我々のいた艦隊が斜め下に見えています!」
「何をバカなことを……、な、なんだと!」
そんなあり得ないことが起きるわけがないと思いつつも中隊長は、部下の言う方向にちらりと視線を向けた。
部下が言う通り友軍艦隊は水平線上にではなく、今は明らかに艦隊を自分たちが見下ろす状態になっていた。
「なん、だと、そんなバカな!とりあえずみんな伏せろ!身を隠せるところがあったらそこに身を寄せろ!」
その光景に完全にパニックに陥った隊員たちだったが、彼らは海兵隊キャンプで受けた教育によって叩き込まれた海兵隊魂で何とかこの場にとどまり、中隊長の命令通りその場に伏せるか身を隠せるような場所があればそこに身を寄せていた。
中には「さっきの洞穴なら安全だ!」といって先ほど発見された洞窟へと走りだそうなものもいたそうだが、そんな自分勝手なことが許されるはずもなく、その発言をしたものは分隊長による激しい叱責を喰らっていた。
「クソっ!なんてこった!本部に連絡救助要請だ!」
「りょ、了解!」
混乱に陥りつつも中隊長は、自分の近くにいた通信兵に艦隊に連絡を入れさせていた。
一方そのころ、艦隊も軽いパニックに陥っていた。
それもそのはずで、今まで島だと思っていたものが実は超巨大化した“蟹のようなモンスター”の甲羅だったというのだから無理もないだろう。
その“蟹のようなモンスター”は大きなハサミと長い触覚、長い8本脚を持ち、推定200mの高さはあるだろう。
そして、その巨大化した蟹は動き出し、こちらに艦隊に向かってきていた。
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