226.KNRからの報告

 


 庁舎内に入った俺とメリアは早速、KNR総裁のエルデバラン・テーシャに会う為、最上階(35階)にある執務室に向かう。

 執務室のある階へは高速エレベーターで昇っていく。

 乗っているときには激しいGに襲われることもなく、ふわりと心地のいい上昇の仕方だった



 アッという間に最上階へと着いた俺とメリアは、その速さに驚かされながらも執務室に向かい、ノックして入った。



「どうぞ」


 ドアの向こうから返事が聞こえてから大きな木造のドアをゆっくり開く。

 開けると、すぐ目の前にはお辞儀をした状態でテーシャは迎えてくれた。

 その黒いスーツ姿のテーシャは何度見ても、長年にわたって経験を積んできたキャリアウーマンのように見える。


「お待たせ、テーシャ、ご機嫌いかが?」

「女王陛下に国王陛下、ご足労頂きありがとうございます」

「いや、いいんだ、それにしてもあのエレベーターは早いな!」

「現代のものに慣れているはずの国王陛下でも驚かれたんですね!」

「多分久々に乗ったからそう思っただけかもしれないけどね……、それはさておいて、鉄道敷設関係やらその他もろもろどんな状況か教えてもらってもいい?」


「はい、ではどうぞそちらの席にお座りください、お話の前にコーヒーをお持ちしますね……、誰かいる?」


 テーシャは俺たちを執務室にある客用の革張りのソファーに座らせると、隣の秘書室にいる部下を呼んでいた。


 すると数分後、この部屋と直接ドア一つでつながっている隣の部屋から出て来た女性秘書は呼ばれただけなのにも関わらず、コーヒーをトレーに乗せて持ってきていた。


 ちなみに、こうして目の前には机やソファーなどの家具、果てはビルなどの建物が当たり前のように存在しているが、これは俺が移動中や寝る前に少しずつ召喚していったから存在している。

 ビルや線路などは元々何もなかったところに召喚し設置していて、机や食品、銃、服などは倉庫のようなところに納品するかのように一括で召喚し、そこから各所必要なところに運搬して使うようにしている。



 閑話休題



 コーヒーを飲みながら俺とメリアは早速テーシャから報告を受けていた。


「現在は国王陛下が計画していた路線すべて、試運転をして線路の異常や信号、電気供給等の確認までが終わっており、明後日行われる正式営業開始時には全線が問題なく運用可能な状況になっています」

「そうか、それはいいが、つい先日まで言っていたモンスターによる妨害はなくなったのか?」

「それが、不思議なことに妨害にあっていたすべての場所からモンスターの気配が一瞬にして消えていまして……、これについてはKCIAや鉄道捜査部が調査しているところですが、これについて何もつかめていない状態です」


 今までは鉄道関係者がモンスターの襲撃を受け少なくない犠牲者が出ていたが、それが何の前触れもなくピタリと止まっているというのだから驚きだ。

 これによって、今まで滞っていたものがすべてうまく進み、おかげで正式営業開始には間に合わないだろうと思われていた路線が、無事開業までこぎつけることができた。

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