182.突入!


「へッ、陛下、ど、どうされました?」


 驚きと緊張から上ずった声で聞いてきた操縦士に俺はウルス城の屋上に連れていくように頼んだ。


「頼むよ、あそこで孤立して困っている仲間がいるんだ」

「へ、陛下といえど、これを勝手に動かしては、命令違反になるであります!」

「そこを何とかできないかしら?それこそ後で言っておくから、ね?」


 メリアは操縦士にさりげなく自分の豊満な胸を見せつけるようにしてダメ押しをした。


「はっ、それでありましたら……お乗りください!命懸けで送らせていただきます!」

「ありがと!さぁみんな乗って!」


 結局メリアのお色気?に敗れたヘリの操縦士はCH-47を操縦して城まで送ってくれることになった。

 城まではそんなに距離がないので2分もたたないうちに基地上空に到達していた。

 流石にこの異変に気付いたヨナは怒鳴り声で俺たちの乗っているヘリに向かってすぐに引き返すように言ってきた。

 その通信に一瞬操縦士はびっくりしていたが、すぐに通信の回線を無言で切っていた。


 城につくと少し広くなっている場所が屋上にあったので、そこにヘリは着陸した。

 俺とメリア、リレイ、ベルは着陸と同時にあらかじめ開けていたCH-47の機体後部のハッチから降りて城に侵入を開始した。

 ヘリを無防備にしておくわけにはいかないので、ヘリの守備にはサクラとミントと機上整備員がついてくれることになった。


 ヘリから降りた俺たち4人は、城内に通ずる入口前に俺を先頭に隊列を組んでいた。


「よし行くぞ」


 その掛け声に3人は少し緊張しているのか無言でうなずいていた。


 城に入るとゾンビのうめき声がそこら中から聞こえ、それに加えて城内が非常に静かなのもあってものすごく不気味な空気が漂っていた。


 「メリア、どこにいると思う?」

 「おそらくもう少し先に行ったところじゃないかしら?確かウルス城にある城主専用の寝室がこの先にあるはずだから」


 「メリア流石!」

 「ありがと!」


 進んでいくとすぐにゾンビの集団と遭遇した。


 「射撃開始!!」


 その掛け声とともに各々が持っている銃を撃ち始めた。

 この時メリアとリレイはHK416A6をベルはM4A1を撃っていた。


 火力に任せて強引に前に進んでいくと何体ものゾンビがかたまっているところに到達した。


 「Frag out!」

 

 ドン!ドン!

 ゾンビの数が多すぎて銃だと対処しにくいと考えた俺は手りゅう弾を二個投げていた。

 そのおかげで、寝室の入口が見えた。


 「もうすぐだ!突っ込むぞ!着剣!突撃ぃぃぃぃ!」

 「「「うらーー!」」」


 乱戦になると見込んだ俺は持ってきたコンバットナイフを抜き、3人には銃に着剣させ突撃した。

 聞いていた通りここにいるゾンビは首を切り落とさない限り何度でもこっちに向かってきて非常に厄介だった、しかし、ここにいる歴戦の猛者たちによって次々と首をとっていき、ついには部屋の中まで突入することができた。


 部屋に入ってすぐの場所には、今にもゾンビに首をかまれそうなレナが何かの覚悟を決めたのか剣をだらりと下ろし無防備な状態で目をつぶったまま立っていた。

 俺はそれをさせまいと、ゾンビの首を薙ぐようにコンバットナイフで思いっきり切り付け、首が切れた後、ゾンビがレナのいる方向に倒れないように手で右に押し倒した。


「お待たせレナ、よく頑張ったな!さぁ帰ろうか?」


 自分にいつまでたっても痛みが襲ってこないのを不思議に思って目を開けたレナは、目の前の状況を一瞬理解できないでいたが、ワタの声と微笑みを見て思わずレナは泣きながら抱き着いていた。

 後ろではすでに残党も倒し切ったのか、ステラとローザにメリア達が怪我の手当てをしてくれていた。

 この時に変な殺気を感じたのは気のせいだろう、うん、多分ダイジョウブ。


 「レナ、もう大丈夫だからね?怖かっただろうによく頑張った、もう帰れるから」

 「ウグッ、エグッ」

 「よしよし……そこにいる君たちは歩けるかい?」


 俺は壁際に恐怖の為か動かないでいる女性たちに声をかけていた。

 ただ、その俺の声掛けに対してなぜか誰も反応を返してくれなかった。


 「大丈夫だ、俺たちは君たちを助けに来たんだ、信じてくれ」

 「ほ、ほんとに?」

 「あぁほんとだ、手荒な真似はしない保証する。それにここにいたらまたあいつらに襲われるだけだぞ」

 

 それを聞いて安心してくれたのか、座っていて身動き一つ取らなかった十数名の女性たちが立ち上がってくれた。

 相変わらず無言だが、どうやら彼女たちはこちらについて来てくるようだ。

 

 「メリア行けそうか?」

 「ええ、何とか、ローザとステラはリレイとベルに背負ってもらう」

 「そうか、頼むぞ二人とも、レナは歩けるか?」

 「「お任せください!」」

 「ハ、イ」

 「よしじゃあ行くぞ!みんなはついてきてくれ!」

 

 ローザとステラは疲れなのか怪我をしているせいなのか無言のままリレイとベルに背負われていた。

 泣き止んだレナは、怪我をあまりしていなかったので自力で歩いてもらうことにした。

 

こうして、レナとローザとステラ、女性奴隷達は救出されたのであった――――。


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