181.救出作戦!


 時はまた戻り作戦開始直後。


 ガンテの呪術と麻薬によって、一連のゾンビ化した兵士が発生するという情報を実は王国側はすでにつかんでいた。

 なぜなら、これを知っていたガンテの情報参謀はすでにウルス城からひそかに逃れ、KCIA本部でかくまわれていて、その情報参謀から城内での麻薬の蔓延から呪術による王都中央部侵攻の計画まですべて聞いていたからだ。

 ただ、この一人だけの情報だけでは立証することはできないと思ったKCIA局長のウェスタ―・ジェネシスは、この情報で混乱が起きて作戦や計画に支障が出ることを恐れ、あえて王国陸軍にこの情報を提供しなかった。


 ただ、何も情報を上げないのは違うと思ったKCIAは、この情報の裏をとるため城内に局員を陸軍にもばれないように密かに潜入させ、この情報を一番知っていそうなガンテの女性奴隷“長”なるものを捕獲していた。


 この女性奴隷はかつて大陸中心部に存在していた旧中央諸国連合のアルゴ王国の元王女なのだという。

 元王女の奴隷から聞いた話だと、すでにこの計画はガンテだけではなく副官や他の将校なども麻薬中毒状態によりすでに実行不可能に陥っていて、さらにファルナ基地を占領している海軍部隊も同じような状態になっているそうだ、しかし呪術はすでにいつでも発動できるようにガンテ本人が今現在城にいる兵全員にかけているらしい。

 この女性のおかげで情報参謀の言っていたことの裏が取れたのでこの情報を伝えに行くため、彼女を保護している施設のあるKCIA本部アルダートからSH-60で前線基地まで急行した。


 しかし、前線指揮所にこの情報を持っていったときにはすでに作戦終了の報が流れていて、前線指揮所ではすでに戦勝ムードだった。

 それを見て急行してきたKCIAの局員たち(万が一のために戦闘部隊も一緒にきていた)は一瞬何もなかったと安堵していた。


 しかし、それからしばらくして前線指揮所に届いた通信によって再び張り詰めた空気が流れ始めた。

通信の内容は、城内で正体不明の敵性勢力に襲われていて城内で待機していたメランオピス隊に死傷者がでてしまったため応援要請が入った。

 これに加えて、城の最上階にガンテにとらわれていた女性奴隷たちとともにメランオピス隊隊長のレナとローザ、ステラが孤立しているという情報も入ってきていた。


 この応援要請に対して、万が一に備えて常に戦闘準備状態で待機していたミセア大佐率いるミスティア第一大隊と、KCIAが本部から連れてきた戦闘部隊、さらに作戦終了時一番前線に近かった陸軍特殊部隊を引き返させこれをメランオピス隊救援部隊として向かわせることにした。


 この情報を知ったワタはおそらくこのままだと下の階から救出を始めると思ったので、メリアと近衛第四師団に同行していた。結局活躍の場がなくなっていたベル、リレイ、サクラ、ミントたちは、ヨナに何も言うことなく最上階にいるレナ達を助けるために直接城内に乗り込むことにした。


 「久々の戦闘だな!」


 戦闘準備に取り掛かっていた俺は、何故か気分が高まり変にテンションが高くなっていた。

 今回俺はレナと一緒のM870とVP9を持っていくことにした。


「ハイッ!やっとこれでワタ様と戦えます!……オイ!貴様!神聖なるワタ様に近づくな、汚らわしい!」

「貴様とはなんだ!私にはリレイといったちゃんとした名前があるんだぞ!しかも汚らわしいとはなんだ!!」

「フンッ!そんなのは知らない!……まだ文句があるっていうならここでその口を縫ッテあげマショウカ?」


 相変わらず、ベルとリレイは仲が悪く戦闘開始前からすでに険悪なムードになっている。


「あなたたち!ワタの前でなんて醜い争いをしてるのかしら?それともそんなに嫌われたいのかしらねぇ?どう思うワタ?」

 それを見てあきれたメリアは怒りをあらわにしながら、二人に詰問していた。

「お、俺としては、かわいい女の子同士が争っているのは見たくないかなぁ?」


「そ、そう、で、ですよね」

「そ、その、わ、わ……」


 俺の言葉を聞いた瞬間、ベルは反省した様子で背中の羽をいじりながらうつむき、リレイは顔を真っ赤にしながら固まっていた。

 その状態をサクラとミントはただただ見つめているだけだった。


 「ハイハイ、じゃあ、みんな準備ができたみたいだから行くわよ!」

 「「「「了解!」」」」


 準備が整った俺たちは早速ヘリが駐機している前線指揮所敷地内の場所に向かっていった。


 当然この時、ヘリの操縦士たちは俺らが来ることを聞いていなかったので、ヘリの中でゆっくりとコーヒーを飲みながら休憩中だった。

 そして、俺らの存在に気付いた操縦士たちはコーヒーを入れていたコップを驚きと立った勢いでふっ飛ばし、そしてさらに顔にかかったり服にかかったりしていたが、それもお構いなしに敬礼をしてくれていた。

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