179.ゾンビパニック?!
「クソッ!大変なことになった」
「で、でも、応援は来ているようなのでそれまでの辛抱です」
「で、でも、ゾンビがこっちにもやってくるかもしれないんでしょ?」
「大丈夫だステラ、助けに来てくれるから!」
「ゾンビ化……ってことは!このっ!Fire(ファイアー) in(イン) the(ザ) hole(ホール)(爆発するぞ)!伏せろ!」
レナはさっきの通信で「さっき倒した敵がゾンビ化した」という言葉を思い出し、すぐにベッドに横たわるガンテに近寄り、ガンテの口に手りゅう弾を詰め込んでいた。
手りゅう弾を口に突っ込んだ後、レナは味方が爆風にやられないように、とっさにローザとステラと周辺にいた女性たちに向かって伏せるように叫んでいた。
ボン!!
手りゅう弾が爆発すると、ガンテの頭は完全に砕け散っていた。
幸いにも対象がベットと壁の間にいたため、周りには被害が出ていない。
「これでゾンビ化しないでしょう」
「さ、流石ね……」
レナは満足そうな顔をしていたが、それ以外はガンテであったものを見て、顔を引きつらせるものやあまりのグロテスクさから目をそらすものもいた。
「ん?何か来るっ!?」
先ほどの手りゅう弾の音を聞きつけたのか、廊下には何かが近づく気配をステラは感じた。
その反応を見たレナとローザは、すかさずバリケードになりそうなものを部屋から見繕い入り口に可能な限り敷き詰めた。
「来るぞ!」
グアァァア、アアァ!アアァウ~
この部屋に向けてぞろぞろとさっき死んだはずの何体もの兵士が迫ってきていた。
バンッ!ガシャン!バンッ!ガシャン!バンッ!ガシャン!
それを見た瞬間いてもいられなくなったレナは、背負っていたレミントンM870ポンプアクションショットガンを撃ちまくっていた。
ポンプアクションショットガンというのは、フォアグリップ(フォアエンドとも)を前後に動かし排莢と装弾を行うショットガンの中ではポピュラーなもので、このM870はポンプアクションショットガンの代名詞ともいえる存在で、様々な国の法執行機関や軍隊で使用されているだけでなく日本国内でも自衛隊と警察以外でも許可さえとればこれを所持もできるほど広く流通している。
撃ちだす散弾はその特性上きちんと狙いを定めなくても近距離ではだいたい当たるので、建物内での近距離戦闘にはもってこいだ。
迫りくるゾンビに向かってレナが撃ち始めたのを見て、すかさずローザとステラも持っていた銃で撃ち始めた。
「Frag(フラグ) out(アウト)!」
ピンッ!…………ドン!
徐々に増えてきたゾンビをまとめて倒すためレナは、破片手榴弾を投げた。
Frag(フラグ) out(アウト)とは味方に手榴弾をなげたことを伝え爆発に巻き込まれないように気をつけろという意味で、ガンテの口に手りゅう弾を突っ込んだ時にレナが言っていたFire(ファイアー) in(イン) the(ザ) hole(ホール)と似たような意味だ(こちらは爆発物全般に使われる)。
撃ち始めてから5分ほど経つと、ついに銃の弾が切れたので3人とも剣で戦っていた。
しかし、こうなると数をさばききれなくなり当初部屋から10m付近のところで戦っていたのが、ついには部屋の入口付近まで押し込まれてしまっていた。
「はぁ、やばいな、ッッ!応援はいつ来るんだ?」
「フンッ!さすがにここまで多いとはッ!」
5分もたつと3人とも部屋の真ん中まで追いやられ、傷も増えてきていた。
「きゃあ!……や、やめろ!」
「ローザさんッ!」
ついにゾンビの猛攻に耐え切れなくなった、ローザは床に押し倒されるような恰好でゾンビに今にも噛みつかれそうになっていた。
(もはや、これまで!)
レナは万が一スパイ容疑で捕まりそうなときや抵抗できそうにない敵から辱しめを受けそうな時用に“自決用”のC4爆弾を懐にしまっていて、それを今使おうとしていた。
そう思ったレナは、できるだけ多くの敵を自分の近くまで引き寄せ道連れにしようと、剣をだらりと下ろし無防備の状態になっていた。
そして、ついにレナの目の前に彼女を喰らいつこうとしてきた瞬間目をつぶりその瞬間を待った。
しかし、待てど暮らせど痛みは来なかった。
目を開けるとそこには、返り血を浴びたのか顔に血をベッタリと付けたこの国の国王と、女王、天使?ともう一人がたっていた。
「お待たせ、レナ、よく頑張ったな!さぁ帰ろうか!」
こうして、レナとローザとステラ、女性奴隷達は救出されたのであった――――。
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