170.模擬戦2


 空軍機すべてが訓練空域へと向かってから3分後、海軍機は西滑走路(18/36)から続々と離陸をしていった。

 海軍機はすでにここに来るまでに編隊飛行訓練や模擬戦を行っていたので悠々と訓練空域に向けて飛び去って行った。


 話は少しそれるが今後この空軍基地には空軍の中心的な役割を果たしてもらおうと考えているので、戦闘機部隊の増設とF-35Aの配備・管理部門の増設・後方支援部隊配備等々を行っていく予定だ。

 しかし、これでは手狭になると思うので、空港の北側に第四(27NL/09NR)・第五(27NR/09NL)滑走路を増設しようと思う。

 さらに、万が一滑走路が使用不能に陥っても離陸可能にするため地下から地上に向けた離陸専用の半地下滑走路を6か所建設し、これにともない地下に整備施設や地下指令室、各種補給物資運搬用の地下鉄も進めていく。

 これだけに限らず別の場所にも空軍基地を建設したい。






 作戦に参加する全航空機が飛び立った後、俺とメリアと各軍高官たちは基地屋上に設置されたモニター画面で模擬戦を見守ることにした。

 画面上右には空軍機72機が赤く表示され、左には海軍機60機が青く表示されていた。

 戦闘空域は基地より北に30㎞離れた位置の高度2000m~12000mの場所で行う。


「これより模擬戦が開始されます」

 真剣な面持ちで戦闘開始を伝えてきたのは空軍大臣のエリカだった。

 今、彼女は重要な役職を任されているという重圧と、俺と姉であるメリアが見ているという緊張感によって支配されていた。


 その言葉とともに、画面上に表示されている赤と青の機体アイコンが動き始めていた。


 お互いにまずはトップスピードを出し急接近していった。


 先陣を切ったのは空軍第2航空団のF-22だ。

 第2航空団所属機は海軍側の機体を視認してすぐブレイク(編隊を解除し散開すること)し各々の指定された相手機に向かっていった。

 これに気付いたはずの第一一戦闘攻撃飛行隊のF-14Dは回避行動をとることもせず反撃に移ろうともせず、むしろアフターバーナーを吹かし第2航空団所属機を追い越し後方へと通り過ぎて行った。


 この行動に驚いた第2航空団所属機は混乱してしまいそのおかげで各機バラバラになってしまった。

 それを好機と見た第一二戦闘攻撃飛行隊(F/A-18)は相手一機に対して二機で攻撃を仕掛けていった。

 しかし、元々の運動性能が高いF-22はF/A-18の攻撃をサラリとかわし逆に後ろをとりキルコールをしていた。


 一方、第一一戦闘攻撃飛行隊はアフターバーナーで第二航空団より後ろにいるとみられる第三航空団(F-2)を自分たちの高度より1000m低い位置にいるのを発見していた。

 第3航空団はきれいに編隊を組んで飛んでいてこちらに気付いてはいないようだったので、第一一戦闘攻撃飛行隊は急降下を仕掛けた。


 第一一戦闘攻撃飛行隊が急降下を開始したとたん、今までいなかった第1航空団(F-15SE)が彼らの上空から現れこちらも急降下を始めていた。

 そして第一一戦闘攻撃飛行隊のことをレーダーでばっちりと動きを追っていた第3航空団は急上昇をして攻撃を仕掛けた。


 これには第一一戦闘攻撃飛行隊はさすがに逃げるタイミングも立て直す隙もなく一気に撃墜判定を受けその数を減らしていった。

 第1・3航空団のコンビネーションと戦術によって第一一戦闘攻撃飛行隊すべてが撃墜判定を受け全滅した。


 残る第一二戦闘攻撃飛行隊は最初、機体性能差もあって多少被害を受けていたが、今は互角の戦いに持ち込んでいた。

 しかし、第一一戦闘攻撃飛行隊が全滅したことによってほぼ無傷の第1・3航空団がこちら側に参戦してきたことによって、それまで互角に戦っていたのがウソのように簡単に瓦解していった。



 戦闘開始から5分後、モニターは赤一色になっていた――――。


 もし最初に、突出してきた第2航空団を一気にたたいていれば海軍側の有利のまま進んだが、それに構わず第3航空団のみを狙いに行ったからだ。

 なぜ、この第3航空団を集中狙いしたのかというと、この第3航空団のみ訓練時間が短く練度が低いだろうという見立てがあったのでその弱い部分からたたいてしまおうというのが理由だ。

 これを空軍側は逆手に取り、この弱い部分を狙ってくることを見越してここにやってくるであろう相手機を戦闘空域ギリギリの11000㎞で待機していた第1航空団が急降下をかけて奇襲しようと考えていたのであった。

 要は上下からの挟み撃ちをしようということだ。



 結果が出終わり、全機に撤収命令が出た。

 模擬戦は空軍側の圧倒的勝利で幕を閉じた。


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