空編

155.セレンデンス空軍基地


 俺たちは、空軍幹部たちが乗る車に先導され、基地中央部にある司令部に到着した。

 この司令部は、管制塔と一緒になったビルに入っており、両隣には航空機を守るための鉄筋コンクリート造の大型シェルターがある。

 管制塔は高さ150mあり、管制室のある部屋は地上120m付近にある。

 

 ビルの中に入ると、新築のマンションなどによくある“匂い”がした、今まで木造やレンガ造りの建物が多かったので久しぶりの感覚だ。

 魔術核融合炉発電所が無事に発電と送電を開始したので、ビル内は蛍光灯の明かりで満たされている。

 大きめの玄関から入ってすぐの場所は、講堂のように広く造られていて、そこにはコンダート空軍第101保安警務大隊から編成された特別儀仗隊の隊員たちが広間の中心を挟むようにして整列し、突然の来訪にも関わらず俺たちを出迎えてくれた。


 特別儀仗隊の装備は、指揮官(大佐)はサーベルを装備し、他の隊員はM1ガーランドを装備している。

 このM1ガーランドはアメリカ軍が第二次世界大戦時に主力ライフルとして使っていたもので、よく戦争映画などで連合国側の兵隊が使っていることで有名で、この銃で最も有名な特徴として最終弾が排莢されると同時に「キーン!」と甲高い金属音を響かせながら挿弾子(クリップ)が飛んでいくことだろう、そんなM1ガーランドは現在新しい銃に置き換えられつつあるが今でも一部の自衛隊の儀仗隊が使用している。

 M1ガーランドの使用弾薬は30-06弾で7.62×51㎜NATO弾より威力が高いものが使われている。

 

 この特別儀仗隊は、コンダート王国の王族や貴族、高級武官や各国からくる国賓などを出迎え“栄誉礼”をとり行うために編成した部隊のことで、普段の保安警務大隊の任務は基地の警備を担当している。

 この特別儀仗隊の後ろには、演奏を担当する軍楽隊もいる。

 栄誉礼は日本の自衛隊のやり方に沿ってやっていた。


 これが終わると俺たちは、空軍総司令官ルーメル・クレイシ―に連れられ空軍司令官室に案内された。

 中に入ると中心にデスクがお互いに向かい合うようにして6個あり、それを囲むように本棚が部屋の壁側すべてにあり、その本棚はぎっしりと埋まっていて、入り口を背にしデスクの目の前にする形で長めのソファーがあった。

 そこには、この基地を整備すると同時に軍事関連の辞書や教書なども納入していたので、おそらくそこから厳選してきたのであろう。

 こういうところを見ていると、クレイシ―空軍大将がものすごく真面目で努力家なんだろうなというのが伝わってくる。

 

 そんなクレイシ―は王国士官学校時代、空軍総参謀長エレテス・セフィーロと二人でよく図書館に毎日のようにこもり、様々な軍事関連の書籍を読み漁り研究していたようで、それもあって卒業時提出した論文当時の軍上層部に評価されるほどであった、今でもこの部屋にある現代の軍事技術や用兵術などについて研究をしているらしい、特に空軍はこの世にはない“航空機”を使う軍なのでなおさらであろう。

 クレイシ―は、明るく人当たりのいい性格のセフィーロと対照的で、人見知りで且つ物静かな印象がある、見た目はキャリアウーマンを思わせるような感じで、黒縁の眼鏡をかけ目つきは鋭い、髪は黒くショートカット、体つきは出るところは程よく出て、引っ込むところは程よくといった感じだ。

 正直、俺が彼女と初めて会ったとき、かなりの塩対応に見えてしまったので印象は残念ながらよくはないが、本人からすればそういうつもりはなく気恥ずかしさや緊張からああいった反応になっていたのだろう。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る