152.後宮でのひと時

 

 ひとまず今回考えだした計画を紙に書きだした後、メリアにつられ俺も寝てしまっていた――――。


「陛下?陛下!ご夕食の時間ですがいかがなさいますか?」


 どうやらずいぶんと寝てしまったようで、メイドに起こされて気づけば、部屋は真っ暗でもうすでに夜であった。

 真っ暗で見えないが、これまたかわいいメイドが俺のことを起こしてくれた。

 俺の下心満載な気持ちを察知したのか、メリアは飛ぶような勢いで起きてきた。


「ワタ、今何か良からぬこと考えてたでしょ?」

「いや?何も?」


「……まぁ、いいけど、それにしても私ったらここについてからすぐに寝てしまったみたいね、その間仕事をワタにやらせてしまっていたのは申し訳ないわ」


「いやいいんだこれぐらい、むしろメリアの寝顔を見てほっこりしてたから」

「ウフフ、ありがとう」


 起きた当初は睨み殺される勢いだったが、ちょっとでも甘いことを言ってやるだけでメリアはコロッと態度を変えた。


「ご、ご夕食はいかがなさいますか?」

「おっと、ごめん、すぐに行くよ!」


「ちなみに、今日は何かしら?」

「今日はカレーを用意しております」


「「カレー!?」」


「はい、カレーですが?」


 メイドから聞いた今晩の食事が“カレー”というから、二人は驚いた。

 それもそのはずで、カレーのレシピを教えたのは、戦艦大和と武蔵とごく一部の海軍関係者調理師の限られた人達だけだったので、ここにいるメイドたちが知っているのが普通ならありえないことだったからだ。

 メイド曰く、このレシピはミサ海軍中将からもたらされたようだと言っていたが、その理由としてミサ曰く、今度後宮に“行くことになるだろうから”その時にたくさん作ってほしいから今のうちに覚えておいてほしい、という事だそうだ。


 そんなことはともあれ、俺たちはカレーのにおいにつられるようにして、食事が用意されている大広間へと足を向けた。

 机の上には言っていた通りカレーが並んでおり、その隣にはサラダと今日の晩酌用のお酒が用意されてあった。

 ここに出ているカレーはオーソドックスなジャガイモと人参と玉ねぎでつくったものだった。

 それとともに置いてあるお酒は黒糖梅酒だった、個人的には日本酒の次に大好きなお酒で、特にこの梅酒は黒糖の甘さと香りとともに梅酒の味と良さがマッチしているので最高の梅酒だと思っている。

 それをメリアとともに、なんともない世間話をしながらゆっくりと食事を楽しんでいた。


「そういえばメリア、明日の予定ってなんだっけ?」


「もう忘れたの?明日は出来上がった高速と鉄道を視察するんでしょ?ついでに言うと明後日は、ウルス城に潜入を開始した部隊からの情報が届くはずだからそれを確認するのと、セレンデンス基地の視察をするんでしょ?」


 明日俺たちは、行きは今日の朝に召喚したブガッティのシロン(魔改造版)に乗りながら高速を視察し、在来線と新幹線で帰ってくる予定なのだ。

 そして明後日は、メランオピス隊がすでにウルス城内と城下町に潜入しているはずなのでその書類の確認と、その後はセレンデンス空軍基地に視察しに行き、空軍飛行部隊の見学と、同日にキティホーク所属の海軍航空隊も飛来してくるのでそれもあわせて視察に行く予定だ。


「そっか、そうだった!そうなると明日は物凄く楽しみだ」

「何で?」


「それはもう、メリアと一緒にお出かけできるのはもちろんのこと、男にとって夢のようなことが明日できるんだからに決まってるさ」


「ああ、なるほどね。で、私はそのついでってこと?」

「そんなことないさ、ぜひメリアにも、この楽しさと良さを知ってもらいたいことが大きいよ」

「ならいいけど……と、ひとまず御馳走様。ミサのおかげでこんなにおいしいカレーがここでも食べられるなんて最高だわ!」


 メリアは相当カレーを気に入ってくれたようで、メイドたちに明日の夕飯の時にまた作るように言っていた。

 黒糖梅酒もメリアに好評だったようで、まるで水のようにガバガバ飲んでいた。

 メリアの場合かなり酒に強いようで、顔色一つ変えなかった。


「メリア、そろそろ風呂に入らないか?」

「そうね、ワタが出してくれた“温泉”とやらに入りましょ!」


 食事も終え、そろそろ眠くなってきた俺たちは、後宮内4階にある温泉へと向かった。

 昨日もそうだが、やっぱりお風呂や温泉に入ると一番疲れが取れる。

 もちろん、今回も二人で一緒に湯船につかった。


 温泉に入った後、いよいよ眠気がMAXになった二人は一直線に部屋へと向かい、すぐに眠りについた。



 翌朝、二人は後宮のテラス席で優雅に朝食をとっていた。


 そこで、昨日食べたサンドイッチと似たものを食べ、浅煎りのコーヒーを飲んでいた。


「やっぱり、朝はコーヒー飲むと目が覚めるね」

「空気もいいし、おいしい食事をワタと一緒に取れてるから私幸せよ」

「今日からまた忙しくなるけど、朝からいい感じに調子が出てきたから頑張れそうだよ」

「うん!」


 これから俺たちは以下のスケジュールで予定をこなしていく。


 1.王城からブガッティのシロンに乗り、中心街から西に少し離れた位置にあるアルダート西IC/JCTから中央縦貫自動車道に乗りハミルトン経由でセレンデンスまで向かう。

 2.セレンデンス空軍基地で航空隊訓練観閲。

 3.基地内、司令官室を借りてウルス城の潜入作戦の報告を聞く。

 4.空軍航空隊視察後、海軍航空隊が飛来するので、それも視察。

 5.帰りは、セレンデンス駅からガンダルシア駅までE7系新幹線で向かい、ガンダルシア駅で新幹線を降りてガンダルシア駅から在来線(E531系)でアルダート駅に帰る。


 この流れでこの後予定をこなすために、今日は朝5時には起きていた。

 そして、6時には王宮を出て、最初の目的地には夕方には着くつもりでいた。

 しかし、この時ワタはいい意味でこの後この予定が崩れるとは思ってもいなかった。



 

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