143.迷惑
そんなことより、二人はやっとありつけた食事のことしか頭になく出てきた瞬間、小走り気味にテラス席に向かい、何も言うことなくすぐに、そのサンドイッチにかぶりついていた。
「うまい、うますぎる!」
「初めて食べたけど、こんなにうまいものなのね!」
「かかっているタレみたいなものが素材の味を邪魔しないようになっているから、なおさらおいしいね!」
「そうね!最高!これもそうだけど、何より二人っきりで食べれていることが幸せ」
「俺もだよ」
そんな、バカップルみたいな発言をしてしまった二人は、お互いに恥ずかしくなってしまい、しばらく無言でサンドイッチをむさぼるように食べていた。
「メリア、のど乾かないか?」
「そういえば、飲み物は何も注文していなかったわね、何か買ってこようか?」
「いや、水を“もらってくるよ”」
「え?水は“買うもの”よ?」
「え?」
どうやらコンダート王国内では水は有料で、そこら辺にありそうな井戸水を汲んできたものではなく、加工されたものを購入して飲んでいるようだ。
元の世界で水をいくらでも飲める環境にいたので、軽くカルチャーショックを起こしていた。
これには理由があって、過去に井戸水や川等でとってきた水による伝染病が流行し、この伝染病で当時の国民の6割が死亡し、当時の国王(今から4代前にあたる)がこれが原因とみられる病で命を落としている。
これを受けて、コンダート王国内全土の国民に対して“法律”として、水を飲料水として使う場合は必ず沸騰させ消毒したものを使うようにと定めた。
この影響を受けた隣のエンペリア王国もこれに倣い同じ法律を制定している。
ただし、コンダート王国やエンペリア王国以外の国は川や井戸水をそのまま飲んでいるようだ(コンダート王国軍は非常時や緊急時はそのまま使っている)
正直驚きを隠せない俺は、頭の中がすっきりとしないまま、レジへと向かい水を頼んだ(価格は1Ⅿ)。
それをもって、席に行くとメリアが座っている席を取り囲むようにして、こわもてのお兄さん5人がとりかこんでいた。
「よう、そこの可愛いねーちゃん、俺らと一緒に遊ばない?」
「俺たち、そこそこ名の売れた冒険者だから、お金はもってるよ」
「いい酒場もあるし一緒に来ない?」
そんな男たちに対して、まるで汚いものを見るかのような目つきで拒否反応を示していた。
「いいえ、結構です、私には連れがいるので」
「そんな、やつよりきっと楽しめるぜ?なぁ?お前たち?」
「ゲルダ兄さんの言う通りっす!」
あまりにもテンプレすぎる展開で、思わず俺は笑ってしまいそうだったがそれをこらえて、俺は水をゆっくり飲むことを諦め、メリアをその場から連れ出しさっさとどこかへ行ってしまおうとした。
「メリア、行くぞ?」
「うん!」
当然こいつらは、そんな俺のことが気に食わないはずで、予想通り背中から声をかけられた。
やっぱりどこかへ行かせてくれないようだ。
「おい!そこのお前!どこに行くんだ?そこのねーちゃんは俺らが先に約束したんだぞ!」
「そもそも、てめーみたいな奴に、そんな可愛い子は似合わねぇよ」
流石にその言葉に頭にきたのか、メリアは咄嗟に言い返そうとしていたが、俺はメリアの口をふさぎ、あえて丁寧な言い方で勤めて慎重に言葉を返した。
「お言葉ですが、お兄様方、何か間違ったことを仰っていませんか?この子は私にとって不釣り合いだとしても、私の恋人です、それと私たちがどこへ行こうともあなた方には関係のないことではありませんか?」
「何だ?その口の利き方は?このゲルダ様に対してその態度といい、口といい何様のつもりだ?」
「ああ、すみません言い忘れていました、わたくしコンダート王国の王様です、そしてこの女性はコンダート王国の女王様です、自己紹介遅れて、ど・う・も、すみませんでしたー」
最後の部分を言うときに、俺はどうしてもイラつきが抑えられず明らかに挑発的な言い方になってしまっていた。
これを言った瞬間、単純に馬鹿にされたと思ったのか奴らは剣を抜きこちらに向けてきた。
それを見た俺は流石にやばいと思い、一瞬のうちに腰につけていたP320を抜き、コッキングまで済ませ、ゲルダと呼ばれているチンピラのリーダー格に銃口を向けて、臨戦態勢をとった。
右後ろにいたメリアも俺に倣い、同じくP320を構えていた。
その動きに反応しすぐさま、ミスティアの隊員たちも所持していたSIG MCXを取り出しこちらに集まってきていた。
これを見た、周辺にいた一般の人たちは各々悲鳴をあげ逃げていった。
「国王だぁ?そんな嘘で俺らをだませると思っているのか?バカも休み休みに言ってくれ……で、それはなんだ?それで俺らに何ができると思っているんだ?そんなんで本当に勝てると思っているのか?どこまでも俺様をバカにしてくるなお前は!あぁぁ?」
「てめー、みたいなやつなんか王様やっているんだとしたら、もうこの国はなくなってるさ……なぁ?」
「悪いけど、私たちは正真正銘の国王であるワタと、女王であるコンダート・メリアよ!」
これを言われて、流石に動揺したのか少し狼狽した様子を見せる。
「そ、それは、どうやって証明できるっていうんだい?」
その言葉に俺とメリアは口ごもってしまっていた、言われてみれば今王家の紋章的なものを持ちあわせていないのだ。
本来であれば、王家の人間はコンダート王国の国旗を模った紋章を右胸につけているが、今日に限っては庶民と変わらない服装で出かけたいと、メリアたっての希望だったのでつけていない。
「ほ、ほら見ろ、はったりじゃないか!」
「それは、どうかな?お前たちの周りを見てみろ、こんな大勢の護衛をつけているのが王のほかどこにいる?」
「知るか!」
「じゃあ、教えてやろうか?」
「そんなことを俺に教える前に!俺様が強いことを貴様に教えてやる!!」
パン!パン!
ゲルダが動き出した瞬間、俺はすぐさま彼の両肩めがけて発砲した。
発射された弾は見事彼の肩を撃ち抜き、その衝撃によって持っていた剣を落とし、痛みに顔を歪ませながら膝から崩れ落ちた。
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