134.陸・空軍合同作戦会議

 

 話が始まる前にセフィーロとエレンはせっせと会議室にいる皆に資料を渡していた。

 資料を配り終わった二人は、壇上に上がり、ひと呼吸ついていた。


 二人は息ぴったりに動き始め、陸軍ヴァーテ・エレン参謀本部長が作戦の概要と敵軍について話し始め、それに合わせるようにして空軍エレテス・セフィーロ総参謀長が黒板もどきに話の内容を書き始めていた。

 そもそも、この二人は王立士官学校の同期でクラスもずっと一緒だったため、お互いのことがよくわかっているようで、別の組織の人間同士とは思えないようなスムーズな動きを見せてくれていた。


「まず、本作戦名を“アイアンフィスト(鉄拳)”命名しました、これは、帝国に対して大打撃を与えるという意味を込めて命名いたしました」

「“アイアンフィスト”作戦の流れはこの通りです」


 エレンが黒板もどきを指差すと、丁度セフィーロが書き終わった後だった。



 アイアンフィスト作戦の流れ


 1.侵攻前準備


 陸軍特殊作戦軍第一連隊“メランオピス”、陸軍特殊部隊第一師団“ブラックベレー”が先発隊として行軍開始。

 両部隊はヘリボーンにてセレンデンスの町まで進軍しここでいったん休止。

 翌日、その前の日に夜を徹して運んできた車両に分乗し、ウルス城周辺まで進軍を開始(セレンデンス~ウルス間約750㎞)

 ウルス城周辺に到着後、ウルス城近くにある山のふもとの森に前哨基地をブラックベレー所属第79工兵中隊によって建設開始、同時期にメランオピス所属のA(アルファ)大隊はウルス城内部に潜入し情報収集と工作任務を開始、ブラックベレー所属機械化歩兵連隊はウルス城周辺を警備しているデスニア帝国軍に対して威力偵察を開始。


 本作戦の参加部隊である、対空、自走、防空砲兵師団と機甲軍団、近衛軍団を編成の後、東部遠征軍を新設しその司令官にウェルシュ・ヨナを任命。

 東部遠征軍は直ちにセレンデンスに向かって行軍を一斉に開始(行軍距離約1410km、行軍速度50㎞/h)

 行軍開始から3日後に到着(途中休憩や睡眠を挟んだ為時間がかかった)し一旦休止。


 前哨基地完成の報を受け東部遠征軍が進軍を再開、翌日までにはウルス前哨基地に到着。


 2.作戦前夜


 城内に潜入していたメランオピス所属D(デルタ)大隊(レナが直接現場指揮)は、城内を占拠しているデスニア帝国陸軍の司令官を夜襲によって射殺若しくは捕獲、メランオピス所属B(ブラボー)大隊は城内地下に閉じ込められている“奴隷”達を救出、残るA(アルファ)、C(チャーリー)大隊は城門を内側から破壊し、本隊の侵入経路を作る。

 ブラックベレー所属全部隊は城内から城下町外に出れる裏口を発見し次第罠を仕掛け、その周辺で待機。


 3.作戦決行日


 作戦当日、想定では敵陸軍部隊の指揮系統が寸断されているので、むきになった敵軍が一斉突撃を敢行してくると思われる。

 敵が動き始めたのを確認し、味方自走砲師団に所属する全火砲によって一斉射撃を開始。

 それを合図に、千を超える戦車軍団と近衛軍団全軍がウルス城に向かって一斉進軍。

 周辺を守備している敵兵を蹴散らし、城内に残っている敵を掃討殲滅する。


 前哨基地に緊急時用でQRF(Quick Response Force:即時対応部隊)を編制しておく、その部隊には王直属の武装侍女隊(通称 ミスティア)一個大隊を設置する。


 そもそも、QRFというのは読んで字の如く、呼ばれてからすぐに対応できる応援部隊のことで、大規模な援軍が来るまでのつなぎに使われることもある。

 このQRFとして待機する武装侍女隊(通称 ミスティア)は本来、王室関係者が外出した時などに護衛する部隊だが、今回は実戦経験を積ませるためという意味も込めて向かわせた。

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