128.束の間の休息 2


 そして、次の日の昼過ぎに起きた時にはベッドには俺しかいなかった。

 お酒を飲んだせいで、のどが酷く乾き頭もズキズキと痛む。

 あの後何が起きたのか全く記憶になかったが、掛布団をめくってみるとそこには白いベッドがいろんな色で染まっていた――


(oh my goodness… WTF? って、よくわかんないけどこれって……)


 そして部屋を見渡すと、何を争ったのか壁には銃撃と斬撃によってずたずたにされており、昨夜は机に乗っていたものが床に落ち、めちゃくちゃになっていた。


「ほんとに、なにがあったんだよ……お~い!誰か!」


 この現状に困り果てた俺は、一人ではどうしようもないのでとりあえず誰かを呼んだ。


「……」

「え?誰もいないの?なら電話するか……」


 ガガガガン!ドゴンッ!

 誰も呼びかけに応じなかったので、仕方がなくベッドサイドに備え付けられていた電話に手を伸ばそうとした瞬間、入り口がものすごい勢いで吹っ飛んだ。


「ワタ様!ベルが迎えに参りました!」


 ベルの手には、以前召喚したM240があり、どうやらそれでドアを破壊してきたようだ。

 昨日の戦闘でドア自体が歪んでしまったのか、鍵もかけていないのにあかなくなっていたようだ、しかも部屋の入り口は鋼鉄製のドアなのでちょっとやそっとではあかない。そこでベルは、ドアの蝶番の部分をM240で撃って破壊して開けてきたというわけだ。


「おいおい、ずいぶんと手荒く開けたな、ベルさん?」

「し、失礼しました!昨日のことを思い出したらいてもたってもいられなくなってしまって……ウフフッ」

「お、おう、すまん、昨日のことは記憶になくて」

「それでしたら、あれはノーカンですかね?ではもう一度シますか?」

「ベルさん、とりあえず落ち着こうか?ね?それより、今日は綺麗なドレスなんか来ちゃってどうしたんだ?」


 ベルは黒く露出度の高いロングスカートのドレスをきていて、その姿はとても煽情的で大人の魅力を感じられたので、ついつい見入ってしまった。


「あら?この姿が気に入ったんですか?ワタ様が喜ぶと思って着て来たんです!このまま私を召し上がってもいいんですよ?」

「いや、やめとく、とりあえず服をくれないか?」

「は~~、わかりました、すぐにご用意してまいります」


 俺の淡泊な返事の仕方に気が障ったのか、うれしそうな顔が一転無表情に変わり、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 そのあとすぐに戻ってきたベルは、来た時と同じ笑顔だったので一安心した。

 俺が着替えている最中、ベルはずっとニヤニヤしながら見ていたが、一々反応するのもつかれるので、そのまま放っておいた。

 着替え終わると、ベルに飛行甲板に来てほしいといわれたので、さっそくついていくことにした。

 どうやら飛行甲板上でキティホーク乗組員全員参加の戦勝パーティーが開かれていたようだ。

 俺が以前この戦いが終わったらバーベキュー大会をしたいといったのを誰かが覚えててくれたのか、それを本当にそのまま実行してくれていた。

 ただ、俺が来た時にはもうすでにみんなは大体食べ終わり、思い思いに会話して楽しんでいた。


「みんなが楽しそうにしててよかったよ、これからもよろしく」

 

 そう俺がボソッと言うと、ベルは俺の腕をとり寄り添うようにしてきた。


「大丈夫です。そんなに心配しなくても、皆心からワタ様に従ってついてきてくれますから」


 二人は、しばらく楽しそうにしている兵たちを眺めていた。


 海編  完

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