97.実弾射撃訓練
キーレ港を出港して数時間後、沖合30海里まで出てきた、丁度20㎞先に標的用の小島が見えている。
ここまで大和も武蔵も機関の運転に問題なく、今も続けられている兵たちの猛特訓によって徐々に練度が上げられていっている。
俺は艦内の士官用の部屋が用意されていたので休んでいた。
内装は流石大和といったところなのか、こういうことに疎い人でも豪華なつくりを感じられる。
今まで誰かしらが近くにいたが、今回は部屋の外の護衛を除いて完全に一人の状態でゆっくりできた。
ちなみに扉の前で護衛を務めている兵(計12名の4交代制)には護身用としてHK VP9とMP7を渡し軽くレクチャーしておいた、中には陸上で事前に訓練してきたのか別の武器を持っているのもいた。
「おはようございます陛下、そろそろ予定時刻となりますので防空指揮所までお越しください」
ベットの上でLiSMをいじっていると、時間になったので伝令が呼びに来てくれた。
なぜ第一艦橋ではなく防空指揮所に行くのかは艦橋に比べ、艦の最上部に位置するため周辺を一番見渡せるからだ。
「伝令ご苦労、すぐに向かう、艦長は?」
「艦長は第一艦橋にて指揮を執っておられます。それでは、失礼いたします」
伝令が部屋を出た後、俺はすぐに身支度を済ませ始める。
あと少しで部屋を出ようとしたときに扉を叩く音がした。
「どうぞ」
「失礼します。おはようございます陛下、お迎えに参りました」
「ああ、おはよう、ヴィアラか。少しでも寝れたかな?」
「ええ、昨日は陛下より色々な話をしてもらいましたので、気も落ち着いてよく寝れました」
昨日はあの騒動?の後、俺はヴィアラと夕食のついでに俺の私室で雑談をしていた、こうやって誘っていたのは司令官や艦長が通常通り動いていたのに対して、まるで思考が止まったかのように身じろぎ一つせず、席から動こうとしないヴィアラの姿があったので、ここにいては他の士官や兵たちにあまりいい目で見れないであろうと判断し、理由をつけてそこから移動させようとしたからだ。
その話の中でヴィアラはさっきの自分の行動を相当恥じていたようで、最初はそのことが引っ掛かっていたのか終始しょんぼりしていた。どうやらヴィアラは急な事象にすぐに対処するのが苦手で少し時間をかけてようやく実行に移すような性格をしているため、さっきのようになってしまうようだ。
ここまで来るのに海軍の長として何とかやってきたが、頭の良さや指導力はあっても実のところ、急なことや即対応が求められることはほぼすべてミサに任せていたようだ。
この性格が悪さをしたのか、今回の作戦は陸軍より先に本当は実行すべきだったものを判断の遅れも合わさってしまい今に至る。さらにはそれ以前の作戦も、それが遠因で負けてきたのもあるようだ。
しかし本人はそのことを理解しているのでまだましなようではあるが……
「そんなことよりすぐに防空指揮所に向かわないとな、行こうか」
「はいっ!」
この時のヴィアラは昨日まで硬い印象だったが、昨夜話をしたおかげなのか時折まるで少女のような笑顔を見せるようになっていた。
防空指揮所に上がると、そこにはすでにミサが待っており双眼鏡片手に島のある方向を眺めていた。
「陛下、お待ちしておりました、間もなく予定時刻の1000となります。これより右60度方向に見える小島に対して実弾射撃訓練を行います」
それを聞いてすぐに号令とともに訓練が始まった。
(やばいです!興奮が止まりません!!)
俺は皆にばれないようにガッツポーズをしながら一人興奮をしていた。
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