81.突入!
「戦車連隊はこれより準備砲撃に入る、目標前方敵陣地、弾種多目的榴弾、一斉射!!」
「「「了解!!」」」
ドン!ドドドドッ!ドンドンドン!
200門もの戦車砲が一斉に火を噴く、連続して撃ったことによって周辺は小さな地震が起きたように揺れている。
ある程度撃ち込むと陣地にあったテントなどは跡形もなく吹き飛び、辛うじて残ったものも、今は火が付き燃え盛っている。
「全車撃ち方やめ!随伴歩兵は降車戦闘用意!」
俺が無線で連絡を取って暫くすると、待機していた戦車連隊による一斉射撃が始まった、音のする方向を見ると爆発によってその方向だけ明るくなっている。
「戦車連隊長より“アエトス”へ、陣地無力化確認、砲撃を中止し今より白兵戦に移る」
「“アエトス”了解、なるべく捕虜をとらえよ」
「了解!」
戦車連隊は随伴していたM2ブラッドレー歩兵戦闘車に乗っていた兵士たちで降車戦闘に入った、同時に合流していた“メランオピス”の兵も加わり戦闘に加わる。
兵たちが敵陣につくと、そこには見るも無残に破壊されたテントや荷車などが散乱しており、そこら中に敵兵の死体が転がっている。
「生き残っている奴は捕まえておけ!抵抗するものは射殺しても構わん!」
エレザは降車した兵たちをまとめ残党狩りを始めていた、しかし、歩けどそこには死体か、四肢や腕などが切断され呻いている敵兵しか残っていなかった。
エレザ自身も見回ってみたが、最後までまともな奴は残っていなかった。
「生存する敵はもういない!撤収!」
しびれを切らしたエレザは兵たちに撤退を促した。
「敵発見!」
撤収を始めようとしていたとき、一人の兵が死体に埋もれてもがいている敵を発見した。
「引きずり出せ!」
何人かで乗っかっていた死体を片付け、下にいたものを引きずり出す。
「お前は誰だ?所属は?」
近くにいた女性兵士が支給されていたHK416を突き付けながら、引きずり出された敵を詰問する。
「私は、王国近衛師団第3近衛歩兵“副”連隊長だ!」
「貴様か!国を裏切った不忠者は!」
「ハッ、笑わせるな!あんな女にこの国の王が務まると思うてか!それに加え、どこの馬の骨かしらん男なぞを国王に据え付けおって!恥を知れ!」
「貴様ごときが何を抜け抜けと!馬鹿も休み休み言え!」
「お前もいつかあんな奴の下にいられなくなるぞ、そのm――」
パァン!
「失せろ、屑が」
エレザは我慢がならず、そのまま頭部をHK416で撃ち抜いてしまった。
「陛下、ご指示を」
俺は隊員たちの顔を見渡す、皆目に闘志をたぎらせているのかギラギラと光っているように見える。
「さあて、裏切り者と帝国兵に目にものを見せてやろうじゃないか!状況開始!!」
「「「了解!!」」」
情報部隊からの偵察によって場所がわかっていたので、隊員たちは横に隊列を組み目的地である山小屋へと駆け足で向かっていく。
腰まで生い茂っている草をかき分けながらいくと、一分もしないうちにまた開けたところに出た。
そこには平屋建ての大き目のログハウスがあった。
その周辺に見回りの兵が巡回していたり、たき火で何かを焼いている連中もいる、見渡した感じだと少なくとも50人ぐらいがたむろしている。
俺はあらかじめ決めていたハンドサインで全員に対して戦闘開始の合図を出す。
パスッ!パス!パパパパパッ!
その合図をもとに一斉に攻撃が開始される、サウンドサプレッサー(減音器)をつけているため、くぐもった銃声が聞こえてくる。
俺もほかの敵兵士に向かってHK416Cを撃っていく。
「陛下、周辺にいた敵は排除しました」
インカムでレナが状況を報告してくる、どうやら残るは部屋に残った敵のみとなったようだ。
「中は確認できるか?」
「今のところベランダからのみ中を窺がうことができるようです、しかしそこからではこちらの動きが丸見えのため確認しづらいのが現状です」
この家さえ制圧してしまえばこちらの勝利となるが、中の状況がうかがい知れないので無理に突撃するのも難しい。
「ここは一か八か突っ込むぞ!周囲を完全に囲んで逃げ道を寸断しておけ!」
「御身の仰せのままに」
この家の突入経路として利用できるのは裏口と玄関とベランダの三つだ、各入口に隊員を配置させ周辺にも万が一逃げられないように包囲網を敷いておく。
俺は全員が配置についたのを確認して突入の合図を出す。
「突入!!」
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