68.王都へ

 

 ハミルトン城にはその日の午後にはついていた、この世の人たちからするととんでもないスピードで帰ってきたことになるが、あの戦闘を経験した今俺の配下に所属している兵士たちは、これが当たり前だと思うようになり、違和感がなくなっていた。

 

 ハミルトンの城門に前に着くと、町の人や防衛隊が集まり出迎えてくれた。

 まるで戦勝パレードのように戦車が町の広場に入っていくと訓練所へと進む道を人が囲み、町中大騒ぎだった。




 訓練場に着くと戦車をきれいに整列していた。


 (俺はこれまでこの量の戦車を指揮してきたんだ……)


 そんな思いに浸っていると、隣からまだ先ほどのことを引きずっているのか、ベルが少し不機嫌な顔でこちらに近づいてきた。


 「この後、王都へ戻られますか?さすがに女王陛下も心配なさっているかと思いますが……」


 ベルの言葉を聞いて、今更ではあるがハミルトン城の防衛作戦のことで頭がいっぱいだったのと人生初の戦闘、勝利に浮ついていたこともあり、悪気はないが王都にまだ戻っていなかったことにいまさらながら気付いた。


 「そ、そういえばそうだな、これが片付いたらすぐにでも戻ろう、今すぐ出立するぞ!」


 (勝利に浮かれていて忘れていたなんて、口が裂けても言えない……)


 そんな話をしているとエレシアとローレンス、ノアがこちらに近寄ってきた。


 「陛下!今回の戦いも見事な勝利でした、このままいけば帝国軍も国内から蹴散らすことも可能でしょう」


 帝国に侵攻され本国からの援軍も多くは望めないとなっていた四面楚歌の状況で、死を覚悟し硬い表情だったころと比べ、今やその苦境から解放され、さらには新たな戦術、兵器、部隊を見ることのできたエレシアは満面の笑みでいた。


 「いや、これも兵たちのおかげだろう?第一俺一人がいただけじゃあ、あれはどうにも出来なかったんだからさ」

 「そんなご謙遜を……それにしても陛下、この後はどうするおつもりですか?」

 「この後はメリアのもとに戻るよ、そろそろ戻らないと“約束”も果たせないしね、このまま戦車を引き連れて王都に凱旋するよ、エレシアもついて来るだろう?そうすればきっとメリアも喜ぶだろうし」


 王都から出る前に、メリアが泣きながら従姉であるエレシアの身を案じていたことがあったので、その本人のもとにエレシアが顔を出せば今度は喜びながら泣いてくれると思って王都まで来てもらうように誘ってみた。


 「ハッ、喜んで御供致します!心配をかけてくれたあの子のことも気になりますしね。ということでローレンスとノアは城を頼んだぞ」


 「ハイ、お姉さま」


 「お任せください閣下……そして陛下、この国をこの国の国民をどうかお救いください」


 最後にローレンスは少し険しい表情でそう言うと深々と頭を垂れていた。


 ローレンスは今回の勝利に喜ぶ表情は見せるもののいまだにいつまた来るやもしれぬ帝国軍に対する警戒を解いていないようで、現に帝国方向に面する門には俺が有事の際の備えとして供与したHK416を手にした守備隊が臨戦態勢で任に就いているようだ。


 そのまま二人とその近くにいた城の守備兵たちに見送られハミルトン城を後にした。

 

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