67.喜びの裏で2
今日はいつもと違い姉妹三人全員がそろっての朝食になっていた、普段はみな別々でとることが多くたまにこうやって食事をとるようにしている、本当は陸軍総司令官のヨナと首相のユリアも呼ぶつもりでいたが二人はほかの場所でエンペリリア3世と朝早くから大事な会議を行っているため呼ばなかった。
「「「おはようございます、女王陛下」」」
メリアが食堂に入ると妹たちを含め給仕や侍女が一斉に片膝をつき首を垂れ、王国に伝わる最上級の礼をもって出迎えた。
「おはよう、みんな楽にして」
メリアの一言によって妹たちは席に着き、給仕や侍女は自分の持ち場へと戻っていく。
三人が大きめの丸いテーブルを囲むように座るとすぐに料理が運ばれてくる。
出されたコーヒーをひとすすりしたあと、メリアが座ってからある重い沈黙を破るように話し始める。
「エリサ、アリサ、朝からこんな話をしたくないけど聞いてくれる?今ワタが来てくれてからハミルトンは持ち直してくれた、けど西のハルベルト、東のウルス、南のキーレ港もはや一刻の猶予もないわ……そこでね、ここであなたたちに戦場に出てもらって前線の兵たちを勇気付けてきてほしいの、ただ残念なことに危険性が高いことなんだ…け…ど」
「わたくしは、この国のために命を懸けることは惜しみません、わたくしたちのお父様方されてきたように、ただワタ様に会えなくなるのはつらいことではありますが……」
第二王女のエリサは戸惑うこともなくまっすぐな目でそう答えていたが、第三王女のアリサはメリアの異変に気付いていた。
「メリアお姉さまどうかされましたか?眠そうですが、もしかしてあまり寝ていないのですか?」
すると、メリアはそのまま何も言うことなく首をもたげ静かに眠ってしまっていた。
「エリサお姉さま、メリアお姉さまが寝てしまいました、でも、なんだか……ねむ……」
続いてアリサも眠りについてしまった、最後に残ったエリカはこの状況を異変に思い立ち上がろうとするが体が鉛のように重くなってしまっていて身動きが取れなくなってしまっていた。
しばらくすると、誰かがこちらの様子を見に来たのか足音が聞こえてきた。
「……ッ!!」
エリサは助けを呼ぼうと声を出そうとしたが、うまく声が出せずにいた。
(一体何なの?何が起きているの?)
パニックに陥ったエリサは、その足音が聞こえてくる方向にこの異変を知らせようとまだ動かせる首だけを後ろに動かした。
すると、そこには全身黒ずくめの人が立っていた。
「おっといけない、そこのお嬢ちゃんはまだ効いていなかったのかな?まぁいい……おとなしくねんねしてなッ!!」
エリサは黒ずくめの男に頭を殴られそのまま意識を失ってしまった。
意識を失い力なく倒れていくエリカを支えながら黒ずくめの男は周りに隠れている部下に向かって静かに命令を発した。
「よし、これで“第二段階”は終えた、第三段階へと移行しようか諸君?」
「了解」
その命令を聞くと同時に今までは給仕や衛兵などに扮していた数人の同じ黒ずくめの格好をした男たちが、その隊長格の男の周りにひざまずき次々に転移魔法によってその場から消えていく。
男たちが去った後には眠ったメイドしか残っていなかった。
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