57.戦勝祝い

 

 俺たちは、エレシアとノアに案内され、居館の大きな食堂にいた。


 中心には大きな長い机が置かれ、その上には所狭しに豪勢な料理が並んでいた。

 この食事会にはシルヴィア達から始まりエレシア、ノア、ローレンス、アナスタシア等の面々が居並ぶ中、今回捕虜ではなく“配下”になったリレイやユリーシャも座っていた。


 俺はその机の端っこ、つまりは誕生日席に案内されていた、そこで俺は何とも言えない威圧感に気圧されていた。


(何?このプレッシャー……なんか言えってこと?まぁそうですよねぇ、しょうがない)


「え~、とりあえずエレシア、食事の席を用意してくれてありがとう。そしてリレイにとっては居心地が悪いだろうが、城の関係者諸君は戦勝おめでとう!そして食事の前ではあるが、今この場を借りて今後のことについて話をしておこうと思う」


「まずはリレイ達の処遇だが、この後召喚した兵器を用いてそのまま部隊を率いてもらう、そして次に、城の近くに待機したままの本隊とも合流し合同で北の国境地帯にいる帝国軍を俺たちと共に攻撃してもらう、その際にも召喚したものを配備していくつもりだ、この話の中で何か質問があるか?」


 緊張とプレッシャーの中、話し終えた俺が一息つき椅子に座ると、エレシアから話し始めた。


「異議はありません。しかしやはり信用ならない部隊と行動するとなると少なからず不安が残りますが……、リレイ、お前はどうするつもりだ?」


 エレシアたちがそう思うのは無理もないだろう、昨日まで敵だった者を今日になって味方として受け入れろと言っているのだから、その不安を示すように、ローレンスやノアも心配そうな顔つきで見守っている。


 リレイは、そのとげの入った言葉を冷静に受け止め、こう返してきた


「この度の侵攻は我々の宣戦布告なしに行ってきた、だからそう言われてもなんの反論も見当たらないのも事実だ。しかし、昨日我々は通例であれば裁判にかけられて処刑されるかその場にて打ち首であったであろうものを、陛下の恩情により我々を再び軍人として迎え入れてくれた、こんな恩情を頂いたお方に歯向かう理由はない。今度は本当の意味で陛下のために命を懸けて戦うことを我々は誓ったのだ、それが二度と祖国に帰れないことになっても……」


「フン!その決意がどれほどのものか、次の機会に見せてもらおうか!」

「いいだろう、望むところだ!」


 エレシアは向かいに座っているリレイに吠えるように怒鳴った、エレシアは相当頭に来ていたようだ。

 挑発に乗ったリレイはエレシアの声より大きな声を上げる。


「エレシア、すまないがこれまでにしよう。独断で決めたのは俺だ、責任は俺にある、すまなかった」


 そんなエレシアを見て俺はさすがに罪悪感を覚え謝罪の言葉を口にする。


「そんな、頭を上げてください。私はそんなつもりで言ったわけではありません。もちろん個人的な怒りはありましたが、ただ少し試してみたくて」

「いや、いいんだ。気持ちはわかる。リレイもそのくらいにしておいてくれ」

「はっ!」


「お話のところスミマセンがそろそろお食事にしませんか?せっかくの食事が冷めてしまいますよ」


 アナスタシアは場違いな口調で話を中断させる、もっとも皆は暖かい食事を楽しみにしていた節があったので素直にその言葉に同意して食べ始めた。

 そこで俺はこっちの世界に来てから一度もお酒を飲んでいなかったのを思い出し、ワインが置いてあったのでそれを口にした。

 果実の香りと一緒にふわりとアルコールが感じられた、飲んだ感じは元いた世界のものと何ら変わらないもののように見えたが、少しアルコール度数が低いようだ。

 そんなワインをたしなみながら、メイドたちによって運ばれて出てきた料理を次々に食べていった(俺だけ)、出てきた中にはステーキのようなものや、サラダ、飾りに凝った一品料理などが出てきた。

 さっきまでとげがあったエレシアやリレイも食事を始めると大人しくなり、しまいには仲良く話し始めた。

 そんな二人を見ていると、戦場では常に気を張って頑張っているが、中身は年頃の女性であるようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る