35.闖入者
二人は朝食をとり終わると、メリアは着替えるために自室に戻り、俺は寝室にそのまま取り残されていたので、着替えを新たに召喚した。
この後どんなことが行われるのか全く何も聞いていなかったので、今まで着ていた戦闘服では失礼だと思ったので海上自衛隊が着用している第一種礼装(冬服)を召喚した。
今までスーツを着ていたので服を着る事自体には違和感はなかったのだが、セットで召喚された帽子は今までつけ慣れてなかったので、変な感じがする……。
それにしても鏡で見ると、自分で言うのもアレだがカッコイイ。
着替え終わって、しばらくすると、いきなりドアが壊れそうな勢いで開きベルが突っ込んできた。
「ワタ様!助けに参りまし……た?」
「どうした?いきなり入ってきてはダメだろう?」
「いえ、門に入った後、兵に連行されたと聞きまして……でモここハ?ドコデスカ?」
ベルは話している途中から、救出作戦の時も見せた顔になり黒い瘴気のようなものが発生している……。
「ちょ、ちょっとベル?ど、どうしたのかな?」
「ワタサマガ……ベット?オンナ?ニオイ?」
ベルは何かをぶつぶつと呟きながら、ふらふらとこちらに近づいてくる。
俺にベルがつかみかかって来そうになったとき、さっきのドアの開く(壊れた)音が聞こえていたのか、レナ達メイドとサクラが駆けつけてくる。
「貴様!何者だ!ここはメリア女王陛下とワタ国王陛下の寝室であるぞ!」
「アナタハダァレ?テキ?ミカタ?」
もはや何かに取り憑かれたかのような動きでベルはふらふらとサクラ達の方向へ向かう。
「陛下のそばから離れろ!」
ベルとサクラはお互い無言で剣を引き抜き戦闘状態に発展し緊迫した空気が漂う、サクラの後ろに控えていたメイド達も慌てて護身用ナイフを構える。
「二人ともそこまでよ!」
そこに着替えを終え4人の侍女達に連れられ、百合のように白いドレスを着たメリアが、少し息を切らしながら、二人を制止する。
「今すぐ剣をおさめろ!!」
いきなりの怒声に驚き、皆一様にこちらを向き、そのまま固まってしまう。
「俺の目の前で仲間割れをするな!!そもそもベルはこの事を知っていたはずだろう?何故こんなことをする?」
「し、失礼しました、気付いたらその……我を失いこんなことに……この罪一生をかけてでも償います」
俺の怒声に驚きベルは我を取り戻したようで、恥ずかしさから顔をほのかに赤くし俯かせていた。
「いっそのこと奴隷になってしまいなさい……そうしたら正室の座は揺るぎないものに」
「ちょっと待て、何故そうなる!?とはいえ何故止めなかった、シルヴィア、キューレ、それにエレザ、ミレイユ」
「こんなことになってしまい申し訳ありません陛下、こうなってしまったのは、ワタ様が兵に捕らわれていたままかと思いあの後私達5人は城に侵入しました、ただ侵入したさきが不幸なことにこの後宮でした、その時偶然ワタ様が国王になられていたことをこの付近を歩いていた関係者から盗み聞き救出する事を断念しましたが、それでも何故かベル殿はこの部屋に突入していってしまいました……。この軽挙で無計画な事を起こし、門での陛下の警護を怠った事をお許しください、罰はいくらでも受けます、それでも足りなければ終身奴隷として陛下にお仕えいたします」
「わ、私も止めたんだけど……あんなことに……ごめんなさい」
「我々も成す術がなかった申し訳ない」
「何よ!私たちは最初から関係なかったんだから!フンッ……でも奴隷ねぇ、ウフフ」
「そうね、5人ともに終身奴隷ね!」
「いや、いいよ、ここまで派手にドアを壊したとはいえ、結局被害もないし、反省もしているようだし、ただ……次はないと思え!」
「「「ハッ!」」」
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