33.新国王誕生?

 

 気付くと、10人位寝られそうな大きなベットに寝かされていた。


「おはよう、良く寝られた?」


 そして隣からメリアが聖女のように微笑んでいた。しかも近い!そして微かに甘い香りがしてくる……って一緒に寝ていたってこと!?


 しかも、メリアは白く絹のような部屋着に着替えているので、昨日のぼろい外套を着ていた時より、胸の大きさがさらに強調され、腰のくびれもはっきりとしていて、さらに綺麗に見える。


「ゴメン、昨日の事全然覚えてなくて、これって何かあった後?」

「昨日は素敵な夜だったわ……。”初めて”だったのにあんなに激しく」


 恥ずかしそうにメリアは昨日の夜の事を口にするが、当の俺は起きたばかりだという事もあって、最初は何のことだか思い出せずにいた。


「え……?はっ!」


 しかし、俺とメリアのいるベッドにあるとある”跡”をみて思い出した。


 (まじか、俺はとうとう)

 



「んんっ……さてと、今日から俺ってどうなるの?」


 それを見た俺はとある現象に襲われたが、それを必死に抑えつつこの後の事をメリアに聞く。


「昨日も言ったと思うけど、今日からアナタは“国王”よ、そのためにこのあと首脳陣と顔合わせに観閲式、そして明日は私達の結婚式よ、その次は…」


「ちょっと待って、国王?明日はもう結婚式!?しかも“私達”って」

「何?嫌なの?」

「そんなんじゃないけど、本当に俺でいいのか?会ってからそんなに時がたっていないのに」


「それは心配ないわ、昨日も言ったでしょ?アナタを“鏡”でみていたって」

「そう言えばその“鏡”って何だ?」

「ごめんなさい、いい忘れてたわ」


 するとメリアは、ベットから出て歩いたかと思うと、部屋の中央に立ち何やら呪文を唱え始めた、暫くするとメリアの前から台座つきの、人1人隠れる位の大きさの鏡が現れた。


「これがその“鏡”よ」


 その“鏡”は一見するとただの鏡と変わらないが、メリアが手を鏡にかざすと、そこには産まれてからここに来るまで過ごしていた俺が元いた世界が映し出された。


「これでいつもアナタの事を見守っていたの、因みにこの“鏡”では時間を早送りしたりもできるのよ、だから今までのことを知っているの」

「そうだったのか……見せてくれたのはありがとう。でもそれをみていると結構辛いもんだね」

「ご、ごめんなさい、そんなことにも気付かなくて……」

「いいんだ、第一、見せてくれって頼んだのは俺自身なんだからさ」


 どうやら俺はメリアにこの“鏡”のようなものによって俺の日頃の行い、思想、趣味までも見られていたようだ、それもまるで神のように……そう思うと不気味なものを感じる。


 俺は元いた世界では軍人でも警官でもないただの会社員だったが、そういった知識やサバゲーをやっていたこともあって呼び出されたらしい。

 ただ、そのサバゲでは休みさえあれば毎回行っていたという事もあり、腕には自信がある。

 さらにそれに加えて、俺は困った人がいると助けずにはいられないという性格というのも理由にあるそうだ。

 それを見たメリアは俺に惚れ込んだのだという。


 しかもここに来たのは“転移”で、簡単に言うと元の世界で生きたままこちらの世界に“移動”してきたということで、元の世界では死んでいてこちらの世界で“生まれ変わる” ような“転生”をしたわけではない。


 つまりは元いた世界に戻ることも可能ということだ(戻ったとしてもややこしいことになるかもしれないし、第一今ではこっちの世界にいたほうがメリットありそうだけどね)


 メリアにそのことを聞くと、悲しそうな顔と同時に申し訳なさそうな顔をしながら「できる」と答えてくれたが、俺はまだ戻る気はない。

 というのも、どうせなら今戦乱の中にあるこの国を率いてこの戦いを制し、この国をどこの国からも脅かされず舐められない“大国”にしていきたい、そうしてからでも戻るのも遅くはないだろうと思っているからだ。



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