30.アルダートへ

 

 少しすると5人は村長のいる部屋へとたどり着く。


 以前きた時はノックをするだけで壊れそうなほど扉はボロボロであったが、今は以前の状態が嘘のように綺麗な状態に戻っていた。


 部屋の前にたどり着くとキューレは飛びこむように部屋へと入っていき、母親であるフレイアに抱きつく、二人は再開を喜びあい、母は無事であったことに安心して涙を流し、娘は母親と再会できたことが嬉しかったようだが何か思うことがあったのか泣いてしまった。


 こちら側は全員そろって急な展開に棒立ちになってしまったが、涙を誘うような光景を見て女性陣はみんな涙目になってしまっている。


 フレイア親子は、しばらくして湧き上がる感情が収まってきたのか、フレイアがこちらに向きなおり頭を下げてきた。


「この度はこの村をそして私の娘を救ってくださってありがとうございました もし、ワタ様に来てもらえなかったらこの村は潰えていたことでしょう、しかし、今はワタ様がかの“マシンガン”であのリザードマンを倒したことによって、村の人々は希望がもてたのか、戦争が始まる前の村の状態まで戻ったかのようです。本当にありがとうございます」


「いや、俺もこのベルに連れられてたまたま来て、あいつらにムカッときたからやっただけさ、そんなに言ってもらう程のことはしてないし、はたから見ればただのお節介野郎なだけだから ただ本当に助け出せてよかった……」


 エルベ村はリザードマン襲撃後、村総出で修復作業を行っていた。

 村の多くの人々は今までの襲撃で疲れ切った状態だった、しかし、村中には多くの塹壕や土嚢・柵などがそのままだったので撤去した。今では跡形もなく、むしろ前まであったことを感じさせない状態までになっている。


 それでも多くの部分は戦いの傷跡が残ったままではあるが、現在も修復作業が続いている。


「今更言うのもなんですが、最初ワタ様にお会いしたとき、正直言ってこの方が女王様の求めている“召喚者”だとは思えませんでした。しかし、一人森の中での戦闘や今回の村事やアジトでの戦闘を見聞きして、この先ワタ様が帝国との戦闘でこちら側に有利な方向に持ってきて頂けると思えるようになりました」


「ベル殿の言う通りです。私も最初、一人でいったい何ができるのかと思いましたが、この“銃”によってその疑問がなくなりました」


 今回の戦闘で村の人々やベル達が銃の有用性に気づいてくれたようだった、今後村の人たちだけでなくこの国の人に知ってもらい、今の戦争でこのコンダート王国を勝利に導いてやる!!


「話は変わりますが村長殿、身勝手ではあると思いますがこのままワタ殿に付いて行ってもよろしいでしょうか?」


 シルヴィアは唐突にそんなことを言い始める。


「あっ!私も付いていきたい!またお母さんと離れることになるけど……ワタと一緒にいたいから」

「ん?キューレ、最後になんか言った?」

「な、なんでもないよ」


 キューレはそういうと顔を赤くしてうつむいてしまう。


「良いわよ二人とも、キューレに関しては丁度女王様に会わせようとしていたことだし、それとシルヴィアは好きにしなさい、この村にいる理由は貴方が決めていたようなものなんだから、それと夢と復讐を忘れないで」

「ということでワタ様、急ではありますが、キューレをそしてシルヴィアをどうかよろしくお願いします」

「「お願いします」」


 二人そろって深くお辞儀をするとそのせいで二人の女性の象徴が服の間から覗いている。


 そんな下心満載の俺の視線に気づいたのか、すぐに姿勢を元に戻す。


「い、良いよ、二人とも、むしろ大歓迎だね!」


 こんな綺麗な女性に一緒に行きたいっていわれて嫌だって言う奴いないよね……って今更だけどもうハーレム状態では?


 最後にシエルも行きたいと言ってくれたが、ベルの猛反対もあって即却下されていた。

 防衛隊長がいなくなるのはよくないので、妥当な判断だろう。

 それ以外の理由の方が多分に含まれていると思うが。


 一旦別れたエレザとミレイユは村の門の前で待っていた。

 なんでも、今さっきギルドで自身のグループの受けていたすべての仕事を中止してきたらしい。


「我々もついて行っていいか? この先の君の動向が気になるのでな」

「お姉さまがついて行くから、私もついて行くんですからね」

「二人ともありがとう! これからよろしく!」

「でも、ギルドのほうは大丈夫ですか?」

「心配ない、さっきうちのクランのナンバー3に任せてきたところだから」


 エレザにそのことを聞くとどうやらクラン内に“副官”的な存在がいるようで、その人がエレザの不在時にその”副官”指揮を任されているようだ。


 そしてこの二人がついてきてくれるのはとても心強い。


(でもなんでか、ミレイユはツンツンしてる、これはもしや……)


「さて、そろそろ我々は王城へと向かいますか」

「そうですね、一応王城があるアルダートに連絡員を行かせているので、あまり心配はしていないかと思います」

「二人とも、今後もよろしく!」

「「ハイッ」」


 こうして6人になった一行は王城へと向かって行く――

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