28.キューレ救出作戦3
仲間がこの状態になっているのにも関わらず、最後に生き残った2人のリザードマンは、部屋の中心で椅子に裸のまま縛り付けられているキューレの首や胸にナイフを突き付け最後の抵抗を試みようとしていた。
「その子を放せ!」
俺はそのナイフを突きつけているリザードマンの頭を持っていた銃で狙いながら、徐々に近づく。
「近ヅクナ!コイツガドウナッテモ良イノカ!」
「やめて!助けて!ムグゥ~!」
「ダマレ! ソコノオマエハソノ武器を下セ!サモナクバコイツヲ殺スゾ!」
キューレは涙目になりながらでこちらに訴えてくるが、その訴えも口を押さえられることによって遮られる
武器を持ったままでは悪戯に相手を刺激すると思い、俺は素直にその指示に従い武器を床に置いた。
そして武器を持っていないいないことを相手に示すため両手を上げる。
どうすればいいのかわからないまま、そのまま立ち尽くしていたエレザ達も俺の行動に倣い武器を置き、手を上げる。
「ヨシ!ワカッテクレタヨウダナ、仲間ハ死ンダガ二人モイレバ“可能”ダ」
「何をするつもりだったんだ?」
「貴様ニハ理解デキナイカモナ」
にらみ合いと一瞬の静寂の後に、俺はあることを思い出しインカムで話しかける。
「……ベル聞こえるか?」
「はい……聞こえていますし見えてもいます」
奴らの前にいる俺達は武器を置き攻撃する手段を失っていたが、狙撃を担当しているベルはまだいる。
「俺が手前にいる奴に体当たりをしたと同時に、後ろでナイフを突き付けている奴を狙撃しろ」
「仰せのままに」
「ナニヲボソボソト言ッテイル!コイツノク――」
一人は言い終わる前に頭を撃たれ、もう一人は俺の体当たりよって倒れる。
敵が殲滅されたことが分かるとベル達はすぐさま家へと向かう、二人が到着すると先ほどワタがタックルをかました相手は部屋の柱に縛り付けられており、キューレはすすり泣きながらワタに抱きついていた。
「もう大丈夫だ、安心して」
「ものッ…すッごく…怖かったです」
「もうあいつらは倒したから、心配しないで」
奴らもそうだったがキューレ自身も衣服を身につけていない状態で、頬や額には何かで殴られ傷ついたのか血の乾いた痕もあり、さき程のナイフを突き付けられた痕あった、ただ不幸中の幸いで“行為”までは及んでいないようだった。
今の俺はキューレの母親譲りの巨乳の感触が衣服を着けていないのでダイレクトに伝わってくる、肩まで伸びた髪の毛はこんな環境下であったのにもかかわらずサラサラしていて、ほのかに甘い香りがしてくる。
「ワタ殿、取り込み中のところ失礼ですが報告します。この屋敷は以前人がすんでいた形跡が見られそれも最近のことだと思われます。先ほど裏の倉庫らしき場所で老いた男性と女性の遺体を発見いたしました、おそらくここの住人だったと思われます」
「そうか……ありがとうシルヴィア」
「そ、そんな畏れ入ります……」
(ハァ……私もあのように抱かれてみたい)
「どうした?」
「なんでもありません、それよりこの後はどうされます?」
一瞬シルヴィアは下を向いてぶつぶつ何かを言ったのち、声をかけられると、さもなにもなかったかのように普段の顔つきに戻った。
「まぁ良い、とにかくこの屋敷から撤退しよう、日もそろそろ落ちてくることだし」
「ワタ様コイツは如何致しましょうか?フフッ」
いつの間にかベルは、柱に縛り付けていた奴に俺のP226を持ち、その銃口を向けさらには不気味な笑みを浮かべ、顔全体が歪んでいる。
(なんでだろう?あの可愛いベルが鬼のように……)
「ど、どうした、ベル、落ち着いて、な?」
「そ、そうですよ、一旦その銃を置きましょう」
「まぁ、まて、そう急くことはないだろうに」
「タノム!コロサナイデクレ」
バンッ!
「乙女をこんなにまでさせた罰よ」
ベルは捕虜として連れ帰ろうとしていたリザードマンを周りの制止を聞かずに撃ち殺してしまった――
殺してしまったことを後悔しているのか悔しさからなのか、今は涙を浮かべ立ち尽くしている。
「ベル、どうしてそんなことを?」
「すみません、解りません……」
ベルはふらふらとキューレに近付きしゃがんだかと思うと、そのまま二人揃って泣き崩れ、シルヴィアも俺も手に負えない状態なってしまったが、しばらくたつと二人とも泣き止み落ち着きを取り戻した。
「私の為に助けて来て頂きありがとうございました」
「もう少し早く助けにこれなくてゴメンな」
「いえ、助けにきて頂いただけで十分です、しかもあんなに抱きつけましたし……」
「ん?最後の方が聞こえなかったが?まァいいや、日が暮れないうちに村に帰ろうか」
「「「ハイッ」」」
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