15.クエストへ
次の朝、二人は何事もなかったかのように起きて身支度をし始めた。
起きてからしばらくすると、誰かが静かにドアをノックしてきた。
音が聞こえたとき二人は一瞬身構えてしまったが、俺が誰だ?と聞くと、従業員だと言ってきた。
それでも心配になってしまった俺は、とっさにつかんだP226をズボンの後ろに差し込み恐る恐るドアを開けた。
するとそこには、いかにも料理をしていそうな服装をした若い女性が大きなお盆にスープとパンを2人分載せて待っていた。
今まで警戒していた自分が恥ずかしくなったのかステラは俺に一瞬目を合わせた後あさっての方向を向いてしまっていた、それを見た俺はその行動がおかしくなって笑っていた。
そんな、やり取りを不思議に思ったのか食事を持ってきてくれた若い女性は首を傾げていた。
目の前にいる女性のことをしばらく忘れていた俺は、そのまま女性を立たせたままだったことを思い出しお盆ごと受け取る。
受け取ってもらった女性は用が済んだことでそそくさとすぐにこの場を離れていった。
受け取った朝食を部屋の真ん中にあった机の上に置き近くにあった椅子を近づけ二人で向き合って食べ始めた。
俺は起きて無性に腹が減っていたので、もらったご飯をさっさと胃袋に収めてしまった。
そんな俺を見て、何かが面白かったのか顔をほころばせて笑っていた。
昨日とはうって変わって和やかに食事を終えた二人はすぐさま装備を整えこの後予定している場所へ向かおうとしていた。
準備も終わり、宿を出たステラと俺は冒険者ギルドに向かっていた。
それは、エレザからモンスター討伐のことについて聞こうと思っていたからだ。
ギルドにつくとすでにそこには多くの冒険者たちであふれかえっていた。
気になって近くの冒険者に聞くと、どうやら昨日のモンスター大量発生とステラたちのパーティーが壊滅したことが知れ渡っていたらしく、それを聞きつけた冒険者たちが駆けつけてきていたようだ。
中には一攫千金を狙うものや、漁夫の利を得ようと画策している連中もいるようだ。
そんなごった返したギルドの中を進んでいると後ろから誰かに呼び止められた。
「おはよう!ワタ!これからお前もモンスター退治に行くんだろう!」
上機嫌に話しかけてきたのはエレザだった、そんなエレザは近づくや否や俺の肩をバシバシ痛いぐらいにたたきながら笑っていた。
これを見る限りよっぽど戦いたかったのだろうと思い、少し引きぎみでいた。
「お、おはよう!ところでここにいるみんなは全員討伐に行く人たちなの?」
「そうだ!この人数で行けば半日とかからずに討伐できると思って知る限りの人をかき集めてみたんだ!」
聞けば昨日エレザは俺たちと別れたあとそのまま酒場に足を向け、そこで手あたり次第に声をかけていったらしい、その結果がこれのようだ、たぶん戦いのことになると何も見えなくなるのがエレザなのだろう……。
(というよりクランリーダーなら、クランの仲間を招集すればいいのに……、まぁ、何かしらの理由があるんだろうけど)
エレザが言うにはこれからすぐに出発しセレデアの町の西の方角にある森に向かい、そこで手あたり次第にモンスターを退治する作戦のようだ。
聞いていると心配になってくる作戦だが人が多ければその分何かあっても助け合えるから大丈夫だろうとのことだ。
俺とステラもこの作戦に乗じて参加するつもりだが、俺が持つ銃では誤射の可能性もあるので少し離れた場所で活動することにした。
そのことを聞いたエレザは一瞬驚いたが止めることはせずむしろ一緒に行くとも言いだした。
それを聞いた妹のミレイユは顔を真っ赤にしながらこいつらとはいきたくないと駄々をこね、俺がそこで単独行動をさせてくれと言ったらエレザは少しむくれた顔になったがあきらめてくれた、それを見たミレイユも落ち着き用は済んだと思ったのか姉の腕をつかみどこかへ引っ張って行ってしまった。
そんな二人を見て俺らは肩をすくめ、そのまま街を出ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます