花の伝説

勝利だギューちゃん

第1話


冬の終わりから、春先にかけて咲く花に、

スノードロップがある。


白くてとても繊細な花だ。


花言葉は、「希望」「慰め」などだが、誤解されている花言葉もある。

それは・・・


先日、彼女が天国へと旅立った。

まさしく、スノードロップが咲く季節。

でも、彼女とは正式には恋人ではなかった。

キスはおろか、手も握った事がなかった。


僕には、そんな勇気はない・・・

情けなく思う。


基本、女の子は花が好きである。

中には、「花には興味がない」という女性もいるが、少数派で、

たいていの女子は好きである。


しかし、どの花が好きかとなると、さすがにばらける。

何でもいいというわけでは、ないようだ。


薔薇とか、コスモスとかが、無難だが、その子は違った。

「私が好きなのは、スノードロップ」

「どうして?」

「私、君のスノードロップになりたい」

彼女の、口癖だった。


彼女は、昨年の暮れに、容態が急変し、病院に搬送された。

その時、余命を伝えらた。

彼女には、内緒にするつもりだったが、気付いていたようだ・・・


「私、スノードロップを見てから、死にたい」

見舞いに行くと、いつも言っていた。


そして、彼女が亡くなった日、スノードロップを持って見舞いに行った。

「ありがとう」

それが、彼女の最後の言葉となった・・・


僕は、スノードロップを彼女の上に置いた。


すると・・・


彼女の体が小さくなり、雪のかたまりになった。

そして・・・


「ああ、よく寝た」

えっ?

「やあ、お早う」

ミニサイズの彼女が、そこにいた。

「ようやく、自由に動けるわ。もう、大丈夫」

僕は、言葉が出なかった。


「ねえ、スノードロップの花言葉知ってる?」

「希望とか慰めだよね?」

「正解。私は、君の希望になり、慰めになりたかった・・・でも・・・」

「でも?」

「実は、いい言葉ばかりじゃないんだ」

「えっ?」

「誤解されているけど、『死』もあるんだよ」

どういう事かわからなかったが・・・


「君は、私の体にスノードロップを置いてくれた。

それで、人間としての私は死んだ。でも・・・」

「でも?」

「これからは、花の精として、君のそばにいるからね」

「どうして?」

間を置いて、彼女は答えた。


【私は君の、希望になりたい。そう言ったよね】


涙がとまらなかった・・・

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花の伝説 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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