アヒージョ姉妹のすごいおいしい小説

なつみかん

前編

アヒージョ。日本のレストランなどでも提供される料理。鶏肉などを油で煮込むという簡単な料理のため、世界各地に広がり無限のレパートリーを生み出すことができる。そんな料理。

だがしかし、このお話ではアヒージョの意味は少し異なるところがある。

アヒージョというものにフレンズ化の能力を与え、進化の過程を探っていった研究者が、アヒージョの魅力に引き込まれていく。

アヒージョというのは、「生物」だったりするのかもしれない。


科学者は日本人だったため、身近にあった日本産のアヒージョから研究を始めることにした。

もちろん、種類によっても千差万別で日本産とは一概に言えないが、断片的に言えば奥ゆかしさが日本産の主な特徴であった。

なかなか初対面である研究者に顔を合わせてくれない。もちろん、話しかけてもあまり返事を返してくれない。そのうちに、寝てしまう。起こす。怯える。自分に敵対意思がないということに理解するのはもうちょっと掛かりそうだ。

ただ、このアヒージョわりとオリーブから抽出した油が好みのようで、それをやると少し怪訝そうな顔をするが美味しそうにそれを飲んだ。

他にも、魚介類から抽出した出汁や旨味成分の多いものを好む感じである。

あとからわかったのだが、このアヒージョは味付けを食材よりもベースの部分でじっくりと料理されることが多いらしい。

食感や味を楽しめる具材もさることながら、それを引き立てるオイルの部分にも秘密があったとは。これが日本産の奥ゆかしさの正体だったか。


次に取り掛かったのは、原種のアヒージョである。

スペインから取り入れたアヒージョはどちらかといえば油はあっさりとしていて、食材を油で煮込む料理という原型そのままな感じがする。

しかし、同時にそれは食材を引きたてる上では理想的、といった感じだろうか。

原種の研究も面白そうになってきた。

さて、このアヒージョとても警戒心がつよく、身構えた様子でこちらを見てくる。

このままだととてもじゃないが先に進まないので、何か食べ物を与えてみることにした。

しかし、オリーブオイルはあまりお好きではなかったようで、一向に飲む気配が見受けられない。

そこで、今度はパンを渡してみた。原種アヒージョはこれをじっくり観察し、一口口に入れてみていた。

すぐにパンをすべて食べ終えたので、他のものでも試してみることにした。

興味深かったのは、オリーブオイルは飲まなかったものの、オリーブ自体は食べるというところだ。

どうやら、こちらは味付けを具材の方で行うらしい。

そのため、香りがいい食べ物を与えてみるとよく食べるみたいであった。

また、そうやって食べ物を与えているうちにこっちに好意を持ったようで鶏の骨のような棒で演技を見せてくれるようになった。


さて、お次は西欧種アヒージョの研究でもしようか。

こちらは、少し手を加えて少し高級に仕立て上げてあった。さすが西欧。やっぱり優雅さを求めているのかと思ったが、アヒージョ自体はそうでもないらしかった。

まず、最初からこっちに好意を向けてくれた。ツンとした態度はなくむしろ友好的だということがすぐに分かる。

こちらは、オリーブオイルもパンもよく食べるし、魚介類を与えても食べてくれる。

食べてくれるときにとても幸せそうな顔をするので、ついたくさんあげてしまいたくなるが…。ここはぐっと我慢して違う角度からも見てみよう。

何が話せるのだろうか。日本産のアヒージョはあまり話ができなかったし、原種も話すようなタイプではなかったが…。

「ボンジュール」

「ボンジュール」

「クーエルと、トウテュエテレェ?」

「Mon truc préféré est l'olive(私の好きなものはオリーブです)」

いや仏語無理。困惑しているのはお構いなく、向こうからフランス語の嵐が飛んでくる。

仕方がないのでオーケーオーケーといってなんとかしたが、自分の話が聞いてもらえなかったためか少しムスッとしてしまっているようだ。

後でなんとかしようと、日本産アヒージョと原種アヒージョがいたところに西欧アヒージョを入れたところ、日本産アヒージョと普通に日本語で喋っていた。

まじか。と、研究者は落ち込むのであった。

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