サイバー*デスマッチ

RiOS(EIKOH)

サイバー*デスマッチ

◇プロローグ◇

第0話:日常はつまらねぇ

 およそ日常と呼ばれるものは、変わり映えのしない淡泊なものである。

 寝て、起きて、食べて。

 合間に入る彼是あれこれ――例えばそれは仕事であったり、学業であったりする――は日々異なれど、基本的な”日常”というものは、いわば繰返しで成り立っているといって良い。


「何か面白いことねぇかな」


 彼、園宮彼方そのみやかなたは、そんな日常に”変化”を望む――ごく普通の高校生であった。


 日曜日、午後。

 休日の午後とあって最悪に暇を持て余した彼は、自室に置いた20インチの小さなテレビを点けた。

 此れもつまらん、あれもつまらんとザッピングを繰り返す。

 この時間はどうもテレビショッピングばかりでいただけない。


「お、これはどうだ」


 彼が最終的にたどり着いたのは、科学番組だった。

 ドキュメンタリーの形式で、VRヴァーチャル・リアリティー技術確立の研究が語られる。


『……このようにして、今日こんにちのVR技術――とりわけ、完全没入型VR技術は確立されたのです』


――完全没入型VR。


 従来のHMDヘッドマウントディスプレイを用いた方式とは異なり、電脳空間へのダイヴを行う、”VRの完成形”。


 それまでの常識を変えたといっても過言ではない完全没入型VRの技術確立が成されたのは、今から約3年前に遡る。

 脳科学的知見から、以前より脳波に干渉することで映像を見せることは可能だといわれてきたが、そこに手足を動かす”動作”の命令を乗っ取る技術が確立されたことで、人間を仮想空間へ疑似的に送り込むことが可能になったのだ。

 ”カプセル”とよばれる球体に乗り込み、頭に電極を取り付ける――それだけで、現在は仮想空間へのダイヴが可能になっている。

 ゆくゆくは、生体チップを脳に埋め込むことでより・・簡単にダイヴできるようになると言われている。


「しかしなあ……俺が死ぬまでに普及するんだろうか」


 番組のエンドロールに来たところで、彼はつぶやく。


「ゲームの中に入れたら――どんなに楽しいだろう」



 しかし数時間後、何の因果か彼がゲームの中に放りこまれるなどと、誰が想像しただろうか――。

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