第8話

「4枚しかねーの?」




 5つの式神を呼び出す、という話である。




「はい、もう一枚が見当たりませんでした」




 水、土、雷、氷、の4つのカードは、床にばらまかれた状態で見つかったが、残り一枚が見つからなかったらしい。




「もう一枚って、火、のカードか?」




「母親曰く、そのようです」




 カードには、漢字で文字が書き記されている。


自殺なら、自分で式神を呼び出し、その際、火がカードに燃え移ったか。


他殺なら、誰かがカードを抜き取って、殺した可能性がある。




(式神使いの家族にもう一度事情聴取だな)




 ふと、ムロの方を見やると、何やら鼻息を荒くさせ、棚にかけられている制服の匂いを嗅いでいる。




「こっ、これは…… クンクン」




「おいこら、てめっ」




 ロウが拳を振り上げ近づくと、ムロが早口でまくし立ててきた。




「ロウ殿、これはかぐや月姫女学園の制服ですぞ! しかも……」




「知るかよっ」




 しかし、かぐや月姫女学園、の名前を聞いて、一瞬動きが止まる。




「……紫式部、か?」




 ムロの目の奥で、光が瞬く。




「……ご存知でしたか。 式薫という名前、どこかで聞いたことがあると思っていたのですが、紫式部のメンバーの一人で間違いありませぬぞ」




 ロウは、紫式部については全くの無知であったが、今朝、電車でその名前を聞いたのを思い出した。


ムロによると、紫式部とは、花より〇子でいう、「F4」のようなもので、文武両道の伴った上位4名が在籍する学園最高峰の部の事である。


メンバーは、赤嶺アカネ(吹奏楽部部長)、青山ルビー(水泳部部長)、式薫(式神研究会部長)、矢部メガネ(生徒会長)のそうそうたる顔ぶれであり、学内の風紀を守りつつも、イジメの撲滅に尽力したりと、その活動範囲は広い。


正義の味方として、学外でもファンが多数存在するとのことだ。




(説明なっげ)




 耳くそをほじりながら、一応、話を聞くロウ。


ムロは更にヒートアップし、メンバーについてあーだこーだと喋り続けている。




(このメンバーに、式薫の近況がどうだったか、話を聞いてみるか)


















 午後、やって来たのはかぐや月姫女学園。


ムロを車内に残そうとすると、




「私を連れて行かねば、この場でダンボを連発しますぞ!」




 と言われ、慌てて叫ぶ。




「ざっけんな、てめっ……」




 車内をサウナにされたらかなわない。


渋々、ムロを連れて行くことにした。




「あんま生徒をジロジロ見るんじゃねーぞ」




「私はこう見えても、紳士を自負しております」




(変態紳士だろーが)




 ブツクサ言いながら、校内へと入り、事務室へと向かう。




「えーっと、シンジュクク警察署の、ロウって言います」




 警察手帳を取り出し、受付の女性に素性を説明。


昨日の事件の概要を伝え、式薫の近況を知りたいからと、紫式部のメンバーの居場所を聞き出す。




「今はまだ授業中ですので、12時に放送で呼び出します」 




「どーも」


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