239章

「どこを見てるのよ、アン·テネシーグレッチ?」


クロエはそう言うと、ふたた地面じめんに足をつけた。


そして、笑みをかべたまま、茫然ぼうぜんとしているアンを見下みくだすように見ている。


肉体ボディは手に入った。だからもうあなたはいらないわ。新しい世界を創造そうぞうする前に、ここで無価値むかち人類じんるいともきちんと決着けりをつけておかないとね」


アンは表情ひょうじょう強張こわばらせて、そう言ったクロエに向かって走り出す。


そんな彼女に続こうと、たおれていた小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティールも動き出そうと藻掻もがいていたが、その場からは動けずにいた。


……ローズはああ言ったが、私のせいだ。


私がもっとクロエの動向どうこうに目を向けてさえすれば、あいつがローズの体を手に入れることはなかったんだ。


アンは内心ないしん自身じしん不甲斐ふがいなさをめながら、全身ぜんしん機械化きかいかしていく。


もはやそれは、マシーナリーウイルスによる侵食しんしょくではなく装甲アーマード


右腕みぎうで電撃でんげきを走らせ、ふたたびクロエをたおそうと臨戦態勢りんせんたいせいへと入る。


「ローズ……私はお前との約束やくそくまもるぞ」


そして、仲間たちの能力のうりょく――。


ほのお、水、風、地、ひかりの力を発動はつどうさせた。


「大事……家族かぞくとの約束は大事ッ!!!」


すべての力を解放かいほうして向かってくるアン。


クロエは、彼女と同じように合成種キメラの力を発動させ、その体から光をはなち始めた。


「ふふふ、ノピア·ラシックふうに言うのなら舞台ぶたいおわりが近づいているってところね。さあ……終幕しゅうまくよ!!!」


はげしくぶつかる両者りょうしゃ


アンが炎を出せば、クロエも同じように返し。


続けて水のやいば、風の刃をを出せば、同じ力能力で応戦おうせんしてくる。


それから大地をゆらしても、光の波動オーラを放っても、すべて同じ力で相殺そうさつされてしまう。


「まだまだッ!!!」


アンは機械のうでき出して、クロエへとなぐかった。


その腕からはすさまじい稲妻いなづまほとばしっている。


「あら? もしかして力比ちからくらべってやつ? いいわね。受けて立ってあげるわ」


クロエもアンと同じように右腕を突き出し、機械化きかいか


ロミーの体をうごめいているマシーナリーウイルスを完全に制御コントロールしてみせた。


喧嘩けんかを買って、挑発ちょうはつって、あなたのやり方におうじてあげるッ!!!」


そして、雷鳴らいめいとどろかせる腕で、アンのこぶしに向かって右ストレートを放つ。


その衝撃しょうげきで、半壊状態はんかいじょうたいだった玉座ぎょくざ跡形あとかたもなく崩壊ほうかいしていく。


たおれていたノピアやリトルたちも、たおれたかべと共にき飛ばされていった。


激しく土煙つちけむり


その中からやがて見えてきたものは――。


「ふふふ……。ああ~なんて……なんていい気分なのッ!!!」


ボロボロにきずついたアンと、それを見下みおろしているクロエの姿であった。


「もう最高さいこうよッ!!! この肉体ボディッ!!! たとえ同じ力を持っていたとしても、やはり人間じゃ私はえられないッ!!!」

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