232章

ノピアはピックアップブレードをかまえ、後退あとずさるのを止める。


それを見たクロエも足を止め、彼にニッコリと微笑ほほえみかけた。


「覚悟は決まったみたいね」


クロエがそう言うと、ノピアはフンッとはならして口角こうかくを上げる。


その顔を見たクロエは、先ほど彼に言われた――表情ひょうじょうから相手の心理しんりを読み取るとことをやってみていた。


……この顔。


まだ何か考えているわね。


クロエはそんなノピアを見ると、かたらし、さらに笑みをかべた。


「あなたが何をしようが無駄むだよ、無駄無駄」


「ふん。舞台ぶたいに立つということは最後さいごまでやくえんじきるということだ。私がこなしているえない役の出番でばんはまだ続きそうなんだよ、クロエ」


「あなたって本当に伊達だて男ね。そりゃリンベースってあいされるわ」


クロエが挑発ちょうはつしている。


いや――。


からかい、小馬鹿こばかにしている。


ノピアにはそのことがわかっていた。


だが、その怒りはこころおくとどめ、クロエの側面そくめんへゆっくりとまわんだ。


……よし、行くぞッ!!!


ノピアが心の中でさけぶと、クロエへとりかかっていく。


クロエは臨戦態勢りんせんたいせいととのえるため、ノピアのほうへと体を向けた。


その瞬間しゅんかん――。


クロエの背後はいごからロミーとクリアが飛び出してきて、それぞれかまえる。


ラスグリーン先生の声は聞こえたぞ!! これでいいんだな、ノピアッ!!!」


ロミーがさけびながら手をかざし、機械きかいうでから電撃でんげきはなつ。


「もはや目は見えませんが……。おねがい、リトルたち。あいつを……クロエをねらってッ!!!」


クリアの目は先ほどのクロエの攻撃こうげき――ほのおによって失明しつめいしていた。


そのうつくしかった彼女の顔はただれ、完全にひかりうしなってしまっていたのだった。


しかし、クリアの2本のかたな宿やど精霊せいれい――。


小雪リトル·スノー小鉄リトル·スティールがラスグリーンとノピアの思いを感じ取り、クリアの放つ飛ぶ斬撃ざんげきをクロエへとみちびく。


「これくらいの攻撃で私がたおせるとでも思ったの?」


だが――。


クロエはまったどうじていなかった。


それも当然だろう。


今の彼女はラスグリーンのかく――。


水晶クリスタルらい、彼の能力のうりょく――炎をあやつれるのだから。


その力がなくても、ラスグリーン、ロミー、クリア、ノピア4人を圧倒あっとうしていたのに、今さら電撃や斬撃でクロエを倒せるはずもない。


「そうだろうな。この程度ていどでは貴様きさまは倒せん」


ノピアがクロエの言葉に笑みを浮かべ、そうつぶやいた瞬間――。


「ぎゃあぁぁぁッ!!!」」


クロエが突如とつじょ苦痛くつう悲鳴ひめいをあげた。


「一体なにがきているというのッ!?」


全身を確認かくにんするように見るクロエ。


するとどうしたことか、彼女の全身ぜんしんはげしくえ始めている。


今までまとっていたみどりの炎が、今はクロエの体をくそうと轟々ごうごううごめいていた。


字のとおり、体のしんからがされたクロエのあたまの中に、ある男の声が聞こえ始めていた。


「ハハハッ!! どうだいクロエママさんッ!!! 中から焼かれるっていうのはさッ!!!」


その声のぬしはラスグリーンだ。


彼は水晶クリスタルとなってクロエの中で生きていた。


そのことを利用りようして、体内たいないから彼女を燃やしているのだ。


「くそっ! なんてやつなの!? 私の中に入ったらデータ処理しょりされて自我じがを失うはずなのにッ!?」


残念ざんねんだったね~!! この程度で俺から自我がうばえるもんか!!!」


クロエの体はさらに激しく燃えていく。


そして、ノピア、ロミー、クリアが燃えている彼女へ攻撃しようと走り出していた。


「これはマズい、マズいわ。なんとかしないと……」


「ハッハ~!!! このまま俺もろともやしくしてあげるよ、クロエママさんッ!!!」

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