230章

クロエは、頭から顔にかけて綺麗きれい千切ちぎられたラスグリーンをてた。


そして、彼女がゆびをパチンッとらすと、ラスグリーンの体がみどりほのおによってくされる。


原型げんけいのこらないほどはいにされてしまった彼を見ながら、クロエはその灰を両手りょうてはらった。


「う~ん。わるくないわね」


自分の体からき出る炎を確認かくにんするかのように見ながら、クロエは上機嫌じょうきげんでクルリとまわった。


それの様子ようすを見て、後退あとずさってしまっていたノピア。


彼は次は自分だと、にぎっていたピックアップブレードをかまえた。


「クロエェェェッ!!!」


そこへ、全身ぜんしんから電撃でんげき放出ほうしゅつさせたロミーが飛びんできた。


彼女の顔の機械化きかいかした部分ぶぶんがひびれているのもあったが、すさまじい形相ぎょうそうでクロエへと向かって行く。


稲妻いなづまほとばしり、彼女の周囲しゅういには雷鳴らいめいひびわたっていた。


そして、クロエへ向かって電撃をはなつ。


「あらあら。可愛かわいい顔が台無だいなしよ」


クロエはロミーの放った電撃を、ラスグリーンのいのち――。


かくである水晶クリスタルから能力のうりょく――緑と黒の炎を使って応戦おうせん


はげしい電撃と炎がぶつかり、玉座ぎょくざ一瞬いっしゅんにして爆煙ばくえんおおい尽くされた。


やがてけむりれると、そこには――。


「あなたもりないわね。だけど、気の強いきらいじゃないわよ」


クロエによってズタズタにされたロミーの姿があった。


ロミーの全身ぜんしんを覆っていた機械化した部分が、すべてひび割れてしまっていた。


「あなたはアンと同じで私の肉体ボディだから、命までは取らないであげる」


クロエはフンッとはなを鳴らすと、ロミーのことをポイっと投げてる。


そして、玉座の間の半壊はんかいしたゆかたおれた彼女の顔面がんめんを、まるでナイフでえぐるようにり飛ばした。


「でも、あまりにも物分ものわかりがわるい子には、さすがの私も手加減てかげんわすれちゃうわ」


ロミーを蹴ったクロエは不機嫌ふきげんそう言った。


そして、まるでお仕置しおきとばかりに、彼女の体をみつけ始めていた。


油断ゆだん禁物きんもつ、そして大敵たいてきですッ!!!」


そのすきをついて、クリアが飛び込んで来る。


だが、クロエは彼女の動きをさっしていたのか、みずか両腕りょううでし出してみせた。


「っく!? ならば、両腕ごとその体、斬らせてもらいますッ!!!」


「どうぞお好きに」


表情ひょうじょうゆがめるクリアと、余裕よゆうの笑みをみせるクロエ。


はたから見ると、これではどっちが攻撃こうげき仕掛しかけているのかわからない。


そして、クリアが抜刀ばっとう


言葉どおりクロエの両腕とその体を十字じゅうじに斬りく。


しかし、クロエの体から緑の炎が湧き出て、そのきずはあっという間に塞がれていった。


その姿はエジプト神話しんわに出てくる不死永生ふしえいせい象徴しょうちょうである不死鳥ふしちょう――火の鳥フェニックスのようだった。


「あなた……よく見ると綺麗な顔をしているわね。嫉妬しっとしちゃうわ」


クロエはそう言うと、クリアの顔を鷲掴わしづかみにした。


その手から出た激しい炎がクリアの顔を焼き尽くしていく。


「ぎゃぁぁぁッ!!!」


うつくしいってつみよねぇ」


クリアの顔から煙が立ちのぼり、肉のげたにおいが充満じゅうまんし始めた。


火の上にある鉄板てっぱん――いや、そのたとえでは生温なまぬるい。


今の彼女の顔はさか焼却炉しょうきゃくろの中へとほうり込まれた状態じょうたいだ。


「このまま灰にしてあげるわ。幽霊ゆうれい女さん」


悲鳴ひめいをあげ続けるクリアを見てクロエは、恍惚こうこつの表情をかべていた。


そのとき――。


クリアを掴んでいたクロエの手が斬り飛ばされた。


なマグマのようなひかり――。


ノピアの持つピックアップブレードのやいばだ。


クロエの手からはなれたクリアをかつぎ、ノピアは素早すばや後退こうたい


そして、彼女をゆっくりと床にかした。


「もう~いいところだったのに」


ほほふくらませ、子供のように無邪気むじゃきおこってみせたクロエは、斬られた腕をなおしながらノピアのほうを向いた。

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