183章

突如とつじょあらわれたグレイ。


その姿を見たそれぞれの反応はんのうは――。


クリアをホッとかたを下ろして安堵あんど表情ひょうじょうかべていた。


それは以前に彼女は彼――グレイとは顔見知かおみしりだったからだ。


クリアのグレイに対する初対面しょたいめん印象いんしょうは、“ふざけたことばかり言うつかどころのない男”といったものだった。


だが、彼がアンのそだての親ということもあって、特に悪い印象は持っていない。


だが、ラスグリ―ンは――。


「……シ―プ・グレイ。クロエの家畜かちくのお出ましだね」


クリアとはちがい、不気味ぶきみな笑みを浮かべていた。


ラスグリーンは、初めてグレイとアン、ニコと出会ったときから、アンとは別の理由でグレイのことを追いかけていた。


それは、グレイと対峙たいじしたときに感じた――彼とクロエの関係を知ったからである。


何故ラスグリーンが、グレイとクロエのことがわかったのか?


それは、そのときに合成種キメラとマシーナリーウイルスの適合者てきごうしゃだけが持つ力――。


Personal link(パーソナルリンク)――通称P-LINK――相手の心の中が見える能力が発動はつどうしたからだった。


グレイの心の中を読み取ったラスグリ―ンは、今まで続けていた合成種キメラりや、成人せいじんした人間を無差別むさべつおそうのを止め、彼を追いかけてこのストリング城まで乗り込んできたのだ。


すべての元凶げんきょうとなったクロエのひつじシ―プ・グレイ――。


ラスグリ―ンは、そのことをクリアへとすべて説明せつめいした。


彼の言葉を聞いたクリアは、正直どうしていいかわからなくなってしまう。


グレイはアンの育ての親――。


その人物が文明社会ぶんめいしゃかい崩壊ほうかいさせたコンピュータークロエの産み出した合成種キメラだったこと――。


そして、ラスグリ―ンや、アンから聞いていた仲間たちも皆合成種キメラであったこと――。


今のクリアは、その事実じじつ処理しょりできずにかたまってしまっていた。


「今ラスグリーンが言ったことは本当なのですか?」


だが、それでもクリアはまだ信じられないようで、グレイに向かってたずねた。


彼は、無感情むかんじょうに――まるで機械人形のような視線しせんを返し、ただうなづく。


クリアは、取りみだしながらも質問を続けた。


あなたにとってアンの存在そんざいはなんだったのか?


何故クロエとのことをかくしていたのか?


ずっと彼女をだましていたのか?


と、次々に言葉をびせたが――。


根掘ねほ葉掘はほり訊かれるのは好きじゃないな。それよりも、ストリング帝国の皇帝が待ちねてるよ。ほら、顔なんてあんなになっちゃて」


グレイはふざけた態度たいどをとって、まともに返答へんとうしてはくれなかった。


底知そこしれん男とは思っていたが、まさかコンピュ―タ―クロエの使いだったとはな」


今までだまっていたストリング皇帝が、ゆかに突きしたままだったな2本のピックアップブレ―ドを手ににぎる。


そして、ゆっくりとグレイのほうへと歩き出した。


グレイは向かってくる皇帝の姿を見ても、特に身構みがまえている様子ようすもなく、ヘラヘラしているだけだった。


「シ―プ・グレイ……。我がストリング帝国に多大ただい貢献こうけんをしても、褒美ほうび出世しゅっせも何ものぞまなかった男……。そうか……その理由はクロエだったというわけか……」


そして、グレイの前で足を止めたストリング皇帝は、手に持ったブレードを彼へと向けた。


「だが、なんということはない。私はただ世界を守るために貴様きさま排除はいじょするだけだ」

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