71章
――ルーザー。
コンピュータークロエの暴走のより、合成種――キメラと呼ばれる
その後、世界は
「私も城内の古い
キャスの言葉を聞いた全員が、その場に立ち
「あたしも聞いたことあるよ。前に死んだお父さんから教えてもらった。でも、それっておとぎ話じゃなかったっけ?」
マナが亡き父親から聞いた内容は、話の
しいていえば、おとぎ話というだけあって「悪いことをするとルーザーに封印されるぞ」といったところが違いか。
マナは、そのルーザーの容姿や現在の身体状態などを付け足して話す。
「え~とね、その英雄さんにはわかりやすい特徴があって……あれ? なんだったっけ? ……そうだ! たしか顔が隠れるくらい長い前髪をしてるって……」
アンは彼女の話を聞いて、先ほどの野菜売りの老人の姿を頭の中で思い出した。
……そういえば、あの老人。
たしかに前髪で顔がよく見えなかったな。
重傷だったルドを動けるようにしたり、8メートルはある巨体のストーンコールドを
どうやら、そのルーザーという英雄がさっきの老人で間違いなさそうだ。
それにしても世界を救った英雄なのに、
「それとね、身体に女神を
「英雄に女神か……いよいよ神話めいてきたな」
「さらに
「いや、封印し過ぎだろう。大丈夫か、その身体……」
アンが無愛想に
突然ルドベキアがロミーを
その彼の顔は、笑みを浮かべている。
「ジイさんが英雄だろうがなんだろうが、ともかくこいつを動けるようにしてもらうのが先だ」
そう言ったルドベキアは、早足で大広間から出て行く。
その後を、涙を
マナとキャスもそれに続いた。
だが、アンは――。
……もしかして、ストリング皇帝がこの雪の大陸へ来た目的とは、その老人なんじゃないか?
だけど、一体何のために軍を
老人は英雄なのだから、
そのとき、考え込んでいるアンの足が引っ張られる。
アンが見ると、そこにはニコが心配そうな顔をして立っていた。
……いや、今はルドの言う通りロミーが先だ。
「ごめんニコ。早くみんなを追いかけよう」
来た道を戻って、また材木を組みわたした暗い
ルドベキアは以前に来たことがあるのだろう。
何の迷いもなく、スタスタと早足で歩いていく。
口にも顔にも出していないが、彼は急いでいるようだった。
アンはそれを見て微笑む。
……あいつ、何も言わないけど、早くロミーを治してもらおうと急いでいるんだな。
まったく不器用というか、なんというか……。
アンは、そんなルドベキアの姿を見て思い出していた。
ストリング帝国で軍人として過ごしていたときのことを――。
……そういえば、私も一緒だった。
当時のアンは、
それが、いつからか少しずつだったが、
親代わりであったグレイや、いつも傍にいてくれたニコ――。
さらにも同じ部隊の仲間――リード、ストラ、レス、モズのおかげだったと、今さらながら彼女は思う。
歩きながらアンは、急にニコを持ち上げて強く抱きしめた。
ニコは、いきなりのことにビクッと驚く。
そして、アンの顔を見つめた
「何でもないよ、ニコ」
アンはそう言って笑みを返した。
しばらく歩くと、前にいたルドベキアが扉の前に立ち止まってノックをしている。
どうやらルーザーの部屋に着いたようだ。
ゴンゴン、ゴンゴンゴン。
「ジイさん! 俺だ、ルドベキアだ。早く開けてくれ」
声をかけたが、老人の反応はない。
表情を歪ませたルドベキア。
そのノックの音は、次第に乱暴になっていった。
ドンッ! ドンドンドンッ!!!
「おいッ!! いんだろジイさん!!! 返事がねえなら勝手入るぞ!!!」
「そんなに強く叩かないでくれよ。壊れてしまうじゃないか」
中から声が聞こえると、扉はキィィッという音を立てて、ゆっくりと開いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます