62章
アンとルドベキア2人掛かりでも、ストリング皇帝の優勢は変わらなかった。
それでも、先ほどとは違い、アンの表情に絶望の色は残っていない。
「ほう、さっきまで震えていた小娘が
2本のピックアップ・ブレードが、アンのブレードとルドベキアのハルバードを見事に弾き返していた。
アンとルドベキアの攻撃以上の手数を、ストリング皇帝は打ち返す。
それはまるで今は無き宗教――。
仏教における信仰対象である
激しく打ち合いながらも、言葉を続けるストリング皇帝。
「若いな。年寄りの私からするととても
ストリング皇帝がそう言った瞬間――。
無数の手数からアンの顔を目掛けて、赤く光る刃が飛んできた。
「させるかッ!! 髭野郎ッ!!!」
だが、叫んだルドベキアがアンの前に立ち、ハルバードの先端――槍の部分でストリング皇帝の体をカウンターのような形で突き刺す。
それは相打ちだった。
ルドベキアはアンの前に立ったことにより、
アンは、倒れたルドベキアに
「お前……なんで私を
「てめえ……また“お前”って……」
こんな状況だというのに、ルドベキアはアンの言葉に苛立っていたが、言葉を続ける
「それよりも髭野郎の腹に俺の槍は届いたはず……」
ルドベキアの言葉を聞いたアンが、ストリング皇帝のほうを見てみると――。
「肉を切らせて骨を
「そ、そんな……
ストリング皇帝にダメージはなかった。
皇帝はあの一瞬で、もう1本のブレードでルドベキアの攻撃を受け止めていたのだ。
「ちくしょう……死ぬ気でやったのに……かすり傷もつけられねえのか……よ……」
ルドベキアは涙を流しながらそう言うと、そのまま気を失った。
悔しさから涙を流した姿を見ると、王とはいえ、彼がまだ10代という若者であるということがわかる。
ストリング皇帝は、ゆっくりとアンたちの傍へと向かってくる。
アンは、ルドベキアを地面に優しく寝かすと、皇帝の前に立ちはだかった。
「まだやる気かね? 勝負はもうついただろう。君らでは私に勝てない」
アンは何も答えずに、ただブレードを構えてストリング皇帝を
それを見た皇帝は、大きくため息をつく。
「返す言葉は失っても、戦意は失わないか」
プシュー、ガシャン、ガシャン。
ストリング皇帝が
「いたぞ!! ルドベキアを守れ!!!」
それは、先ほどアンたちを囲んだスチームマシーンたちだった。
その数11体。
彼らはマシーンの腕に付いたマシンガンで、ストリング皇帝を集中砲火。
「ずいぶんと
感心した様子のままで、飛んでくる無数の弾丸をすべて弾き返すストリング皇帝。
弾が尽きると、スチームマシーンたちは一斉に飛び掛かった。
「武器だ!! あの光の剣を奪うか壊せ!!!」
11体のスチームマシーンの腕――22本の機械の腕がストリング皇帝に襲い掛かった。
武器を狙われ、ストリング皇帝の持っていたピックアップ・ブレードは、飛んでくる22本の腕によって壊された。
だが、それでもまったく動じることなく、冷静に攻撃を避けて、最初に倒したスチームマシーンに乗っていた男からナイフを2本奪う。
「やれやれ、こういう刃物はあまり得意ではないのだがな」
それから、操縦席に飛び移っていき、操縦者の首を刈っていく。
周囲にスチームマシーンの油と蒸気――。
そして操縦していた者たちの血が混ざって、強烈な臭いを発し始めていた。
一方的な虐殺――。
それは、まさにストリング皇帝がこのガーベラドームの地を踏む前に言った
「生身であの数のマシーンを……。それにブレードを失ってもこの強さなんて……こんな奴に勝ってこない……」
アンがその光景を見ながら
音のする方向を見ると、ガーベラドームの壁が破壊されている。
アンは、ストリング帝国の
その開けられた壁の穴から出てきたのは――。
鹿ような大きな角が生え、下半身はギリシャ神話に出てくる半人半獣の種族――ケンタウロスような
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