38章
雪の大陸での朝は夜と
真っ暗な中、真っ白な雪景色に、2人分の足跡が続いていた。
「今日は大量だったな」
「ああ、マナの嬢ちゃんが喜ぶぜ」
彼らは、この雪の大陸にある反帝国組織バイオ・ナンバー
2人は食料を確保のために用意した獣用の罠を確認しにいって、その帰りだった。
何故まだ朝の暗い時間を選んだのかといえば、この時間帯が雪の大陸に生息する凶暴な獣たち――。
この大陸には、他にも
2人が罠にかかっていて取ってきたのは、もちろん
その帰り道、静かな白い世界を進んでいると――。
ガシャン、ガシャン。
という機械が
その音は次第に近づいているようだった。
プシュー、ガシャン、ガシャン。
そして、それは2人の目の前に集団で現れた。
2本足で立っているツギハギだらけの機械。
それは、頭部が無い人型の形状をしており胴体の上に操縦席を配置され、操縦者が
この雪の大陸に住む、盗賊たちが使用しているスチームマシーンだ。
そのスチームマシーンに乗っていた1人が、レバーを動かした。
「命が惜しかったら、持っているもんすべて置いて行きな」
スチームマシーンの腕が動き、手についているマシンガンをバイオ・ナンバーの2人へと向ける。
スチームマシーンの背から
2人は、持っていた武器――突撃銃であるステアーACRと小さな
そして、背負っていたリュックに詰めてあった大量の生肉を、リュックごと前に投げ出す。
「マジでか! こりゃスゲー量の肉だな。帰ったらさっそくパーティーやろうぜ」
中身を確認したスチームマシーンに乗った男たちが歓喜の声をあげていると――。
突然、3台のスチームマシーンが跳ね飛ばされた。
「なんだ、
声が聞こえた。
それは8メートルはありそうな大きな生き物だった。
鹿ような大きな角が生え、下半身はギリシャ神話に出てくる半人半獣の種族――ケンタウロスような
その半人半獣の生き物は、残ったロボットに喰らいついて、ペッと部品を吐き出す。
スチームマシーンごと喰われた盗賊たちは、機械の破片と一緒にバラバラになって、血と油まみれのまま白い雪の上に転がった。
「はッ、不味いな。やっぱ機械はダメだ。かといって人間なんて喰っても強くなれねえしよ」
バイオ・ナンバーの2人は恐怖で身を固くしていたが、即座に突撃銃――ステアーACRを拾って、半人半獣の生き物へと弾丸を撃ち込んだ。
だが、半人半獣の生き物の体は、突撃銃の弾丸を弾き返す。
「なんだよ、やる気出ちゃうな。そんなことされるとよ」
半人半獣の生き物は、
その攻撃で、2人の肩が切り裂かれ、腕が回転して宙を舞った。
半人半獣の生き物が現れてから、盗賊の集団とバイオ・ナンバーの兵士2人がいた場所は、雪で白かった地面が血で真っ赤に染まる。
肩を飛ばされた2人は、完全に戦意を失い、その場に尻餅をついていた。
「どうした? さっきの威勢はどこいったんだよ。もっと俺を楽しませろ」
半人半獣の生き物が2人へとにじり寄る。
「いたな……
半人半獣の生き物の後ろから、
そして、そこにはサブマシンガンVz61――スコーピオンを構えた小柄な少女が立っている。
黒装束に身を包み、この暗闇の中で義眼の右目だけが赤く光り、長い髪をシュリンプスタイルに束ねていた。
爆炎の中から姿を見せた半人半獣の生き物は、上半身の半分が吹き飛んでしまっている。
黒装束の少女は、素早く近づいて、半人半獣の生き物の傷口に向かってスコーピオンをフルオートで乱射する。
「クソッたれが!!!
半人半獣の生き物は、怒りで我を忘れて黒装束の少女に掴みかかった。
だが、少女は目にも止まらぬスピードで動いて、それを避けた。
少女の動きと共に、シュリンプスタイルの長い髪が生きているかのようにうねる。
そして、腰に帯びていたナイフとサーベルの中間ほどの短い剣を抜いた。
その剣の名は――カトラス。
大航海時代、中南米で使われていた農耕用の鉈を改良した刀剣類の一種だ。
短剣の部類に入るが、彼女の使うそれは刃が大きくかなりぶ厚い。
少女は、半人半獣の生き物へと走り出し、足の間を抜けて、アキレス腱辺りと太もも付近を切り裂いた。
痛みで悲鳴をあげる半人半獣の生き物は、突然走り出す。
「逃がさない……
少女が半人半獣の生き物を追いかけようとしたとき――。
「た、助けてくれ……」
バイオ・ナンバーの2人が、黒装束の少女に救いを求めた。
肩から先が無くなっており、血液を流し過ぎたのだろう、2人の顔にはもう血の気はなかった。
苦しそうに声を発するバイオ・ナンバーの兵士2人。
だが、少女は――。
「……
「へっ!?」
そして、そのまま半人半獣の生き物を追いかけて行く。
「ま、待ってくれ!! 助けてくれよ!!!」
残されたバイオ・ナンバーの兵士2人は、何度も救いを求めたが、黒装束の少女が足を止めることはなかった。
「優先……
少女はそう
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