4章

リードからの連絡で緊急召集きんきゅうしょうしゅうをされたアンたちは、ストリング帝国の城内に来ていた。


中世時代を感じさせる城内は、朝でも夜でも常に照明が付いており、機械ではなくストリング兵が各場所を守っている。


そうはいうものの、やはりいたるところにいる人型の機械や、見張りの兵たちが持っているストリング帝国の発明の一つ、インストガン(突撃銃タイプの電磁波放出装置)を見るにすべてが中世時代のようだとはいえない。


城内の大広間に到着とうちゃくしたアンたち。


そこには、アンたちと同じように深い青色の軍服姿の者たちが大勢いた。


軍服さえ羽織っていれば、中に着るものは自由なようで、アンは軍服の下にパーカー、ストラは白いシャツ、レスは黒のタンクトップをそれぞれ着ている。


「いたいた、お~い」


長身で細身の男――リードがアンたちに気がつき、近づいてきた。


リードは3人に説明をしようとすると、その後ろから顔中に傷がある坊主頭の男が現れた。


「あっ! モズ隊長も一緒だったんですね」


ストラがそういうと、アン、ストラ、レスの3人は敬礼けいれいをした。


――モズ・ボートライト。


アンたちの部隊の隊長。


背は低いが城壁を思わせるガッチリした体格の男である。


年齢は42歳。


アンたちのことを自分の子供のように思っている。


アンたちから見れば、父親代わりのような人物だ(モズ自身は独身で子供はいない。この国の軍人は皆、子が産めない)。


モズは、まず自分から連絡せず、リードに頼んだことをびた。


ストラやレスは、気にしないでください、と言ったが、アンがモズの目の前に立った。


「“モズ隊長”には怒ってない。けど……“モズさん”には怒ってる」


アンがそういうと、皆があたふたし出す。


「アン、モズ隊長がわざわざあやまってくれてるのに」


ストラがアンの真正面を向き、両手で両肩を掴んでブンブン振った。


アンはただそれに逆らわずユラユラと動かされている。


「モズ隊長、すみません。上官が頭を下げるようなことではないのに……。おい、アン! 隊長になんてことを言うんだ!!」


その横で、レスが慌てて言った。


アンが、ストラに両肩を掴まれたまま言う。


「でも……そういうの大事。だから謝ってくれるモズさんは信用できる。グレイも言ってた」


無愛想に言うアン。


モズは、そんなアンの頭をでながら笑顔で言う。


「ああ、ありがとうな、アン」


頭を撫でられ、アンは慣れていないせいか、嬉しいのに微妙びみょうな笑顔になってしまっている。


そんな二人を見て、ストラ、レス、リードの3人は、ほっとした表情で肩を落とした。


諸君しょくん静粛せいしゅくに」


大広間の檀上だんじょうから、抜けのいい大きな声が聞こえた。


怒鳴っているわけでもないのに、大広間にいるすべての人間に聞こえるくらいのボリュームだった。


その声を聞いたすべてのストリング兵が、言葉を止め、檀上の方に体を向けて姿勢しせいを正す。


そして、その声は、大広間にあるスピーカーから聞こえ始める。


「突然集まってもらってすまない。だが、俺は一声かけただけですぐに集まってくれた諸君らのことを嬉しく思う」


檀上からマイクを使って、髪を逆立てた大男が立っていた。


ストリング帝国の将軍の1人――ローバル・バッカス将軍である。


バッカスは、軍服の下に着ている灰色のシャツの第1、第2、第3と開けると、真っ直ぐな瞳をストリング兵へ向けて力強く話を続ける。


「今日集まってもらったのは他でもない。数週間前に出発した、我々の同胞どうほうからの連絡が途絶とだえたことにある」


壇上のバッカスが兵たちに話をする、その後ろ――。


用意してあった豪奢ごうしゃ椅子いすに、オールバックの男と、金髪の長い髪をした女性が座った。

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