第12話 始まり
子ども達の騒がしい声で目が覚める。昨晩かなり話し込んでしまったせいか、それに加えて最近はぐっすり眠れていないせいもあり、全然眠気は取れていなかった。一方で少なくとも同じ時間まで起きていた筈のアイラは子ども達よりも前に起きて朝食の準備を終わらせていた。
それから朝食を食べた後、少し家の掃除を手伝った。
「じゃあ、帰るよ」
「そう」
アイラは短い返事をした後、子ども達を集めて玄関で見送ってくれた。
「……またな」
「ええ」
短い別れの挨拶をし、俺は外を出た。
次はいつ会うのかは分からない。ただ、もう二度と会う事は無いとは思えなかった。
******
穴から少し離れた場所だったが無事に外に出ることが出来た。それから家に帰る。よく考えれば家を離れてからまだ一日と少ししか経っていない。そう考えると随分と濃い日々を過ごした。
それからしばらく自分の部屋のベッドに転がる。考える内容はいくつかあるが、その中で最も目先の問題はバレルについてだろう。真実を話す事は簡単だ。でもそれは決して話す事は出来ない。ようは黙っていれば、知らないふりをすることが一番の正解だ。だが、それをするのは何処か躊躇う自分もいた。ただ、何かを話すとしても何を話せばいいのかは分からない。そんな事を考えている内に今までひっそりと姿を隠していた睡魔が俺を襲った。自分の体勢も悪かったが、俺は睡魔に勝つことは出来なかった。
……。
…………。
それからしばらくして玄関の扉が強く何度も叩かれている音で目が覚める。最近、こんな起こされ方ばかりのような気もする。最初は居留守をしようと感じていたところ、扉を叩く主の声が耳に届いた。
「おいっ、おい。いるのか? おい、ユウト。早く扉を開けろ」
ガイルだ。彼が大声を出しているのは珍しくもなんともなかったが、慌てている大声は珍しかった。何か急用があるのか、それともバレルについて何か聞こうとしているのか、とにかく俺は急いでベッドから飛び降り、玄関の扉を開けた。
そこにはいつものようにどっしりとした態度では無く、神妙な目をしどこか不安を抱いた顔をしているガイルがいた。
「ど、どうしたんだよ。そんな顔して……」
「い、いいか。よく聞け……、レインのいた部隊が全滅したという情報が入った」
それを聞いて頭が真っ白になる。でも、そうなっている場合じゃない。
「いつ?」
「昨日の昼頃、討伐隊の伝令が一人帰還した。おそらく昨日の明朝ぐらいだろう」
「そ、そんな……嘘だろ?」
知らずの内に身体が震えていた。震えている両肩をガイルは両手でガシッと掴んだ。
「落ちつけ、まだ全滅したと決まったわけではない。が……」
ガイルの言葉を最後まで聞かず彼の腕を振りほどき檻に向かって走っていた。後ろから聞こえるガイルの声は次第に小さくなっていった。
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