畜生は望遠鏡を覗いた

冬の寒さに耐えてまで、

星を観るのは

滑稽なことであると思い

私は、その場を辞した。

帰途、

畜生が望遠鏡を覗いていた。

翌朝の希望さえ冷笑されうるその家畜は

星を観ていた。


ぶくぶくとふくれた

家畜

に、

己を投影することの安易を恥じて、

家畜を蹴り飛ばしたい衝動に駆られ、


私たちは並んで寒空の下で星の海を眺める。


「一際明るい星は、シリウス

 それを起点に大犬座

 赤っぽい星はペテルギウス

 それを起点にオリオン座」

「星を知る身分に、なってもみたい

 星座になるのもいいですね

 小さな星々の集合で、

 構いませんので」


畜生は私に背を向けて、夜に溶ける。

私はしばらく星を眺めていたが、

星座については、良く知らない

その点において、

私たちは同じであったのだ。

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