反逆

抵抗することにさえも疲れてしまった私は

抵抗することを、

やめた。

押しつぶされた身体から滲み出る

薄汚い体液を丁寧に拭いていると、

(雑巾

 絞り汁を手にすると

 爪の間に脂がこびりつく)

拭くことにさえも疲弊して、

今度は

泥のように眠った。


心地のよい泥沼で、

(この時私は母を想った)

目と鼻の先で香る

幸福と呼ばれる漠然とした匂いに、

私は泣いた。


(お母さん)

(産まれてしまって)

(すみません)


反逆の意思を持とうにも、

私はその土台さえも持っていなくて

落っこちてゆくだけの沼が、あるだけなのだ。

その事実にまた、

私はさめざめと、

泣いた。



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