日記 2023-05-20

 体の中がムズムズする。

 腐食した私の表面のサビをガリガリと剥がすやつがいる。

 表皮だか垢だか分からないところ、モゾモゾと言語化しづらい気持ちが這い回る。

 このところ、私の一員になろうとして、じわりじわりと機会を伺っていたやつだ。

 この不愉快な新参者へ。

 平時の枯れた自分でははねのける気力もないので。

 一時の気まぐれのようなものだと思ったので。

 そのままに、ただ何も感じずにいたのだけれど。

 誰かが私の感情のスイッチを押してしまったのか。

 いちピクセルの濁りもない灰色の心模様がグリッチして。

 いつのまにか、いなくなっていた私の分身が湧いて出ていた。

 そりゃ私が慣れてしまったものたちなので、大した奴らではないはずだ。

 外に出ていった気もしていたけれど。

 いつのまにか、戻ってきていたんだな。

 いらないと思ったことはない。

 必要だと思ったこともない。

 いや、そもそも、自分とい不可分だと思っていた。

 拒絶も許容もできないような。自分の内から来るものだと思っていた。

 枯れていた。枯れたことに無関心だった。

 きっとどこか壊れてしまったんだろう。

 もしくは壊れていることを思い出したんだろう。

 改めて見ると、汚れのようだし、汚いし。

 帰ってこなくてもいい気がする。

 いや、でも違うんだよ。

 それが私だったんだ。

 汚い自分が正しい。

 悪いことと良いことは両立する。

 ふざけるな。

 肌の上を這いずる、歯が浮くような、むず痒い来訪者に起こされた。

 あー。

 くそ眠い。

 どこからが夢で、夢の中の現実はどこ?

 分からない。分からないから整理する。

 キモいから逃げたくなる。

 逃げようとするとキモくなる。

 でも、その場にとどまっているよりマシかもね。

 錆びて朽ちて。

 僕の肌を僕の心の輪郭を、僕のまぶたを、僕の目のゴミを。

 いや。全部全部私だ。

 知らない。

 知らない。

 思い出したのかも。

 いや、これが私の世界なんだ。

 拒絶しろ。湧き上がれ。

 反転。対極。赤と青。

 全は一、一は全。

 僕を分かつものはそれ。

 私は僕を分かたない。

 私は僕を裁かない。

 僕は私を拒まない。

 僕は私を許さない。

 僕と私は一つじゃない。

 僕と私は分かれてない。

 誓い。思い。勘違い。

 勘違いするような思いこそどうしようもなく真実で、くだらない現実こそ幻。

 体の芯より来る赤。

 心の淵より至る青。

 ああ、律せよ、巻きおこれ、そして、破壊せよ。

 すべての語り得ぬ我が深遠よ。

 さぁ、朝をはじめよう。

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