いつも

生まれた時から洞窟の中で生きてきた。


洞窟の中は、風もなく、光もない。

吐いた息は、1年くらいで自分の胸に帰ってくる。


洞窟の中を掘るのが日課だった。

それ以外の時間は、つまり多くの時間を、地べたに這いつくばって過ごした。

洞窟の中を掘ることは苦しくない。

さっき掘った土も、これから掘る土も、きっと同じ土なのだから。


外のことは分からなかった。

音のする方は真っ暗闇だった。

一歩進むことは足を差し出すことだった。


「だから、僕は一人だった。

「みんなの言う愛なんてほんとはなくて、

「みんな別の何かで埋め合わせしてるだけだろって。

「だって、掘っても掘っても変わらねぇよ。


「僕らは、きっと、パッチワーク。

「ツギハギできないやつの中身がグロテスク。


外に僕はいないのに。

外に君はいないのに。


今日も壁を削ってる。


この中は、風もなく、光もない。

さっき吐いた息に手が届く。


外はうるさいんだろうなあ。

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