第111話 アーノルドの義手

「如何だい、アルケアコルポスの具合は?」

と僕はアーノルドに聞いた。


 アーノルドは失った左腕の代わりに、錬金術で作った義手を装着し、竜牙重力大剣を振り回していた。


―――アルケアコルポスとは、ゴーレムを応用した義手や義足など補助装具である。魔素変換装置や聖素変換装置を使って、使用者の思いのままに動かすことができる。ジェームズが作った義手には、ローデシアの盾に使われていた魔力相殺能力の改良版が仕込んであり、数倍の防衛力を持っている―――


「ああ、悪くねぇ」

とちらっと、こっちを見てさらに振り回した。


「ヒーナの医学の錬金術を使うと、義手じゃなくて、生物的な腕も作れるだけどね……… ヒーナはやる気満々だったよ」

と僕は、アーノルドが剣を振り回している側で腕を組みながら話した。


 ヒーナは、この間作った自分の賢者の石を使ってみたくて、しょうがないと言う感じなのだ。アーノルドが、竜牙重力大剣と同じアマダンタイトのアルケアコルポスが良いと言った時は、ちょっとがっかりしていた。


「ヒーナには悪い事したな。でもよ、あのゲス野郎とやり合うには、こっちの方が良いぜ。それに、あるじとの連絡も取りやすいしな」

と義手の掌を開いたり、握ったりして答えた。


”そうだね。君も念じれば、アルケアコルポスを通して僕たちと、魔法使いのように直接会話できるようにしたからね”

と魔法通信でアーノルドに答えた。


「グェ、頭の中で響く声ってのも、何か変だな」

とアーノルドは普通に声に出して答えた。


「それから、さっきも言ったけど、ローデシア兵の盾のように小さな賢者の石を仕込んで、魔法を相殺する力を入れてあるよ」

と僕は、ちょっと胸を張りながら答えた。


「へー、賢者の石ってのは、錬金術師が、それぞれ自分用に作るだけしか無いって聞いたけどなー。俺なんかに使って良いのか? 」

と義手を右手で摩りながらアーノルドが答えた。


「賢者の石も砂つぶ位小さな、あまり純度の高く無いものなら、六の倍数年で作らなくてもできるだよ。でも単一機能しか割り当てられないけどね。それにしても、賢者の石の新しい使い方だな。これをもっと色々な物に応用すれば、これまでに無い新製品ができるに違いない。これは儲かるな」

と僕は顎を摩りながら答えた。


あるじ、顔が、だらしなくニヤけているぞ」

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