第39話 シェリーの剣の材料

「いや、素晴らしい。レンが言っていただけのことがある。私も、武に特化したホモンクルスを知っているが、シェリー殿はそれらを軽く越えている。アーノルドも、うかうかしてられないな。お互い良いライバルだ」

シェリーとの稽古を終えたタン老師が僕に言ってきた。横で、シェリーが、老師に向けて、武術家が行う礼をした。


「レン老師が言っていたのですが、シェリーが扱う武器としては、シン王国式の剣が良いだろうと言っていました。ただ、気の力が強くて、壊してしまうとアーノルドが言っていました」

と僕は何気に聞いたが、『アーノルドが言っていた』という言葉で、シェリーがアーノルドを睨んだが、当のアーノルドはニヤニヤしながら、別の所へ目をそらした。


「ああ、それは最初、徒手で稽古した時すぐに感じた。だから、それを使うときは、剣では発勁しないように言ったのだよ」


 先程練習で使っていた剣を指さして、タン老師が答えた。


「気を通す、剣の材料はご存じないでしょうか?」

と僕は、タン老師に聞いた。


「うーん、流石に聞いたことはないな。そう言えばミリーとレミー達、聖霊師が持っている、その杖、聖霊樹は、聖素を通すと聞いたことがあるが、どうだろうか?」

タン老師は、先程の慇懃な言い方から、同窓の友達との会話のように砕けて、聖霊師達に聞いていた。


「確かに我等、聖霊師が持つ杖は、聖霊樹という聖都にある樹の枝から作られておる。良く聖素を通し、聖霊師には必需品じゃ。しかし、剣にするほど硬くはない」

と言いながら、一本は僕に、一本はシェリーに渡した。


「確かに、私の気がスーッと入っていきます」

とシェリーが、言いながら、聖霊師に返そうとすると、


「どれどれ、俺にも、ちょっと見せてくれねぇか」

とアーノルドが手を出してきた。


 シェリーが、アーノルドの手を肩で遮り、腰をちょっと捻って、肩で発勁した。


「あぶねぇ、あぶねぇ、シェリー、あぶねぇじゃねーか」

アーノルドは咄嗟に手を引っ込めて、ふっ飛ばされるのを防いだ。


「あら、何かしら」

とシェリーが、とぼける。


「むむ、アーノルド、良く今の発勁をいなしたな。私は鼻が高いぞ」

とタン老師はフォローになっているのか、良くわからないことを言って、アーノルドを励ました。


 僕が聖霊師に杖を渡している時、

「実は、太古、聖霊樹は、今とは違うところに生えておった。その太古の聖霊樹は化石化して、非常に固い金属のような物質になったと聞いておる」「ておる」


 シェリーからも、杖を受け取りながら続けた。


「千年聖霊樹と言って、洞窟深くにあるそうじゃ」「そうじゃ」

「その洞窟は、何処にあるかご存知でしょうか?」

「ここより、ずっと南に下ったところと聞いておる」「ておる」


 僕はそれを聞いて、ちょっと調べてみる価値がありそうだと思った。


 その日は、アーノルドの兄弟弟子も加わって、宴会となった。タン老師は無礼講が好きで、聖霊師も楽しそうだった。


 アーノルドが聖霊師に頭を下げて、杖を触らせてもらっていのが、何か面白かったし、聖霊師が酒豪だったことも意外だ。体つきは子供なので、大丈夫なのだろうかと心配したのは僕だけだったらしい。

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