第35話 暗殺の指示

 影の頭領に、ヌマガーから指示が入った。


“ジェームズ・ダベンポートを暗殺せよ”


『ダベンポート』。十三年前のやり残した仕事が、亡霊のようにつきまとう。

 あの時、殺りそこねた禍根が、知らぬ間に芽を出し、葉を茂らせ、大きく成長しそうな勢いである。


 ミソルバで、ヌマガー自身が失敗したのは、この小僧の仕業だったと明かしてくれた。そして錬金術師であるヌマガーも驚くような、錬金術の力を持っているとも言っていた。

 まるで、十三年前に小僧の母親の力を見誤って、危うく死ぬところだった時と同じだと感じた。今回は小僧の実力を見定めてから、事を起こすとヌマガーに宣言した。


 ヌマガーも全く異論を挟んでこなかった。


 他に聞いた限りでは、護衛のアーノルド、ホモンクルスのシェリーも相当な使い手で、全くあなどれない。ビガーで太刀打ちできるかも判らないほどに感じた。


 まずは小手調べである。アルバのゴロツキ共を使って、襲わせてみよう。丁度、アーノルドと離れているらしいからな。ここアルバは、武術が盛んで、多少は腕の立つ武術家崩れも相当いる。

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