ローデシア帝の異変
第31話 戦争の準備
粛清されると思った。ミソルバでの失敗は致命的だった。
王都を滅ぼすどころか城の壁ちょっと焼いたに過ぎない。住民も王もその親族も、そして奴も、全くの無傷で生き延びている。確かにあの小僧、出来過ぎた弟子が邪魔をしたのだが、そんな言い訳が通用するはずも無いと思っていた。
あそこから、這々の体で逃げ出した後、すぐにローデシアの憲兵に拘束された。殺して逃げる事も出来たが、憲兵達は、丁重な挨拶の後、早まる様な事をせず、戻れと言付かってきたとのことだった。
そしてローデシアに戻り、謁見した時、
「まだ帝業の途中であり、有能な人材を失うわけには行かぬ。位三等降格にはするが、今後も従え」
と言われただけで終わった。
普通なら、感涙にむせぶところであろうが、執務室に入る時、また、あれを見てしまった。ローデシア帝の顔が、残像を引いてぶれていた。そして今回は、二つの顔があるような気がした。
それでも、命が助かったことには違いないので、
「陛下の寛大にして、深いお慈悲に、不佞ヌマガー・ガッシュ、この上ない幸せ者と感じております。この不名誉は、必ずやご期待に応えて晴らすと誓います」
と私は答えた。
それを、待っていたかのように、ローデシア帝は、
「良く言った。その言葉に二言は無いな。では、アルカディアに軍を向ける。その準備をせい」
「……はっ。解りました」
私は一瞬躊躇した。アルカディアを追求するではなく、いきなり軍を向けると言ったのだ。確かに軍事的にも大きく成長したローデシアには、攻めるだけの国力はある。しかし、戦争を起こすには大義が少なすぎる。とは言え、今はこんな事を言える身分ではない。
私の頭の中は、不安と疑問が渦巻いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます