もしもフレンズたちにヒトの叡智があったら

風庭 雪衣

サーバルの場合

 広い広いジャパリパークの中にある、サバンナ地方。

 背の高い草が生える中、一匹のフレンズが一方向を向いて地面に伏せていた。白いブラウスに黄色のスカート。髪色も黄色で、うまく周りの草に溶け込んでいた。


 哺乳網 ネコ目 ネコ科 ネコ属

 サーバル


 天気は快晴。雲は少なく空は青色に染まっている。そこに浮かぶ太陽は南中寸前で、丁度お昼時といった時間だった。

 風はほとんど吹いていない。

 サバンナはほぼ無音だった。


 ──足音が聞こえた。四足歩行特有のリズムを取って、サーバルの近くまで近づいてくる。

 姿を見せたのは、鹿によく似た茶色い毛を持つ動物、インパラだった。それも二匹。親と子だ。

 インパラはまだ草むらに伏せているサーバルにはまだ気づいていない様子で、周りを見渡しながら食べれる物を探している。


 音を追っている獣耳が、ピクピクと動く。

 サーバルの目が、親子のインパラを捉えた。

 サーバルは、目の前に置いてあった艶消しの黒色をした道具を手に取った。

 それは狙撃銃だった。

 安全装置を外すと、上部に付けてあるスコープを右目で覗く。

 スコープ越しにインパラの仔の後ろ足に照準を合わせる。

 サーバルがとったのは、伏射と呼ばれる射撃方法だった。最も安定性が高く、伏せる為に草に紛れる事ができる。そして狙撃銃には二脚が付けられており、安定性をさらに高める要因の一つになっていた。

 サーバルは意識を集中させて、けものプラズムで構成された獣耳を消す。人耳の方は既に耳栓がしてあった。


 ──インパラの仔が立ち止まった。サーバルはその瞬間を逃さずに、引き金を引いた。

 狙撃銃が火を噴いた。

 空気を切り裂き、音よりも早い速度で飛んだ弾は、インパラの後ろ足に吸い込まれていき──。


 刹那、血と肉が爆ぜた。

 小さく細い足は吹き飛び、インパラの仔は地面に倒れた。

 親インパラがすぐその異常に気づき、仔を咥えて逃げようとした。が、

 今度は地面が爆ぜた。サーバルが弾を親インパラの目の前に着弾させたのだ。

 親インパラは身の危険を感じたらしく、仔を置き数歩後ろに下がったのち、全速力で逃げていった。


「ふぅ……やった!」


 獣耳を元に戻し、耳栓外して立ち上がったサーバルは嬉しそうにそう言った。

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もしもフレンズたちにヒトの叡智があったら 風庭 雪衣 @wind-garden

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