恥知らずのピリオド
中二病のレッテル
僕は中二病らしい。
「田中がまたキモいアニメの絵描いてる!」
今日もまたこうして周りにからかわれ、1枚のルーズリーフに描かれた僕のイラストが紙飛行機となって、教室中を飛び交う。
「ほら、掃除用具のモップ持ってきてやったぞ。食えよ」
僕はモップの毛先を思いきり頬張った。
「うわあ! こいつ本当にやりやがった。相変わらずきめえ!」
クラスが歓喜の声で溢れかえる。
「おい、そんなことしてもソイツはなんの反応しねえだろ。心が無いんだから」
硬式野球部のキャプテンであり、クラスのリーダー格である神村が、ワイシャツ生地の上から僕の二の腕を力強くつねった。
「なあ、痛いだろ? いつまでもそんな意地張らなくて良いからさぁ……とっとと泣いてくんない? なんかお前すかしてて、ムカつくからさぁ」
ぼーっと。神村と取り巻き達の顔を交互に見つめながら、その言葉が意味する神村の意思を考えるも、全くもって思い至らない。
僕がすかしてる? ムカつく? 意味が分からない。ただ好きな絵を描いているだけなのに。この人達は何がしたいのだろう。
「お前らなにしてんだ」
「やべっ! 野沢だ!」
僕ら一年B組の担任である野沢明人先生。前の担任が毎晩天狗に祟られる夢を見るというワケの分からない理由で緊急入院したので、その代わりにやってきた先生だ。
「おい、大丈夫か?」
先生が僕のところにやってくる。
「なにがですか?」
「……いや、なんでもない」
先生は頭をぽりぽりと搔きながら僕をしばらく見つめていたが、小さくため息をついて教卓へと足を向けた。
おもむろにカバンから弁当箱を取り出し、フタを開ける。
ご飯の上にケチャップのかかったウィンナーを乗せて、口へと運ぶ。相変わらずなんの味もしない。
僕は本当に心を無くしてしまったのだろうか。
……僕は病気なのか?
「お前ら注目」
放課後前のホームルーム。野沢先生がそう言いながら、両手をパンパンと二回叩いた。
「六月に行われる文化祭の内容がクソつまらなかったのでな。俺が生徒会と結託し、校長先生に提案した企画が通ったから発表する」
クラスがどよめきと期待の声で溢れかえる。
「校長先生に直訴とか面白すぎかよ!」
「野沢ぱねぇー」
「題して――」
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