日常を求めて

死神の逆位置

第1話 プロローグ

平凡な朝。

平凡な日常。

昨日と同じ今日。

今日と同じ明日。

ずっと続くと思っていた日常。

ずっと続いて欲しかった日常。

それは崩れた。

あの日に。


噂になっていたメール。


『汝の正しき願いを示せ』


それだけが書かれた差出人不明のメール。

願いを示すと魔法少女になれる。

というのが曲者で、自分が本当に心の底から願っていることでなければならない。

そんな都市伝説。

私にも届いてしまった。

当然、無視した。

昨日と変わらない今日。

今日と変わらない明日。

それを望んでいたのだから。


「なんで……どうして……」


『汝の願いは受理された』


魔法アプリが、いつのまにかインストールされている。


「……え?なんで。なんでなんでなんで……あ」


時間切れ。

ADVではよくある選択肢だ。

今回、時間切れによって示してしまった願い。

それは、”関わり合いになりたく無い。このまま日常が変化しないでほしい”というもの。

そうだ。私はこんな事とは関わり合いにならず、平凡な毎日を生きたい。

なにも変わらない毎日をずっと。

故に無回答変化無し

悪辣なやり方だ。


幸いにも、このアプリを使わなければ見た目だけは今までと同じ普通のスマートフォンだ。

魔改造されているが。

バッテリーが1ヶ月分ある上に僅か数分で満充電になる、とか。

ストレージ容量が1Pある、とか。

ホログラムキーボードやモニタが展開できる、とか。

色々異常だが普通に使う分には問題ない。


「初期設定だけやって、あとは二度と触るもんか。」


とりあえず、魔法アプリの初期設定を進めていく。

初期設定だけは完了しないと緊急通報すら出来ないとは徹底している。

アンインストールは不可能。


「アクセステスト……?」


初期設定の仕上げに、実際に変身しなければならないらしい。

憂鬱だ。



「……Access」


ミクロコスモスに埋没、接続。

その瞬間、私は蒼い鎖のようなドレスを着て、時計の針の様な一対の剣を握っていた。


『初期設定を完了しました。貴女を歓迎します。』


平凡な合成音声が、初期設定完了を告げた。


ああ、終わった。

平凡な日常は。

この瞬間に。



故に取り戻すのだ。

ここから。

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