第一章 負け犬    

       【 業務連絡 】



  貴 { あした予定通り10時に迎えに行くから


 


 コーヒーを飲みながら、優深にラインを送信した。


 あす、月に一度と決められた娘に会える日。


 NANYOーTDCツインドームシティのレストランで昼飯を食べて、そのあとショッピングか映画を見るか、そして夜は野球観戦。


 最近の定番だ。


 


 優深 { 了解です。仕事は大丈夫ですか? 


 ・・・いつもの事ながら、優深のラインの反応は恐ろしく速い・・・そしていつもの事ながら、相変わらず文面がカタい。スタンプや顔文字なんか見たことない。


 貴 { 大丈夫。仕事は無事終わったよ


 ・・・だからこっちの文面もおかしくなる。


 優深 { よかった。あす、すごく楽しみです・・・としくん、出るかな?


 

 俺の甥っ子が今年、ホワイトベアーズに入団した。


 しかも高卒ルーキーにしてレギュラーに定着しつつある。


 優深は幼い頃から七歳も年上の、その従兄妹によく懐いていて今でも兄妹気分だ。


 人見知りの優深が唯一、心を開く相手なのかも知れない。


 貴 { ずっと出てるから明日もきっとスタメンさ。


 優深 { そうなればすごく嬉しいです。じゃあ明日、楽しみにして待ってます。


 ・・・ラインの会話を自分から締める・・・カタいだけでなく、クールだ。


 これじゃあ業務連絡だな。


 とても小学五年の娘とのやりとりとは思えない。


 

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