愛と涙と、刃と、銃弾と

「実咲……」

 信じられない。実咲に呼びかける。


「なんで! どうして!」


 実咲は泣きながら、こちらに向かって叫んだ。


「どうして殺したの! 殺し合わなければならなかったの!」


 ……どうして、って。


「なにも、殺す必要なんて無かったじゃない! 啓介さんは、正気に戻っていたのよ! 殺す必要なんて、どこにも無かったの!」


「それは、任務、だから……」


「任務? あなたは、麻人は、この五年間ずっとこんなことをしていたの?」


「それは……」


「あなたは、ずっと人を殺して、こんなことをしていたの! 応えて!」

「それ、は……」


 返す、言葉も出ない。


「どうしてあなたは、そんなふうになってしまったの! 麻人!」

「う、あああ……」


 頭がぐらりと揺れる。桐生啓介から受けたダメージは相当深刻なようだ。


「そう……あなたは、ずっとこうして生きてきたのね。人を殺して、任務だといい分けして、自分を誤魔化して正当化して、人を殺し続けていた。啓介さんも殺した!」


 ――そんな……実咲……。 


「この人殺し!」


 人殺し。実咲から出た言葉に、体中に強い衝撃が走った。


「お、俺は……実咲」


 パンッ!


 腹に突き刺さる衝撃。


 腹をまさぐると、手の平に血がついていた。

 実咲が、泣きながら、持っていた銃で俺を撃った。


「そ、んな……」


 そんな馬鹿な。実咲が、俺を撃つなんて……。


 意識が遠のいていく。


 体がいつのまにか地面に倒れていた。


 頭が美味く回らない。視界も何も見えない。


「さようなら、麻人……」


 不意に、強い風と、バラバラバラという(ヘリの音が聞こえてきた。


 ……実咲。


 体中の力が抜けていき、

 そして意識が途切れた。

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