闇夜に、叫ぶ

 ザザ……ザザ……


「う……」


 体中が痛い。頭がぼんやりする。

 それになんだか、体がゆっくりと揺れる。

 手を動かして床を触ると、金属的な感触と冷たさが伝わってきた。


 ここは何だ? 真っ暗で何も見えない。


「……起きたか」


 低く重たい声が聞こえてきた。


「ここは、どこだ?」

「自分で確かめろ」


 ボウッ


 何も無い場所から火の玉が現れた。それは空中に留まり、あたりを照らす。


 ……何も無かった。


 大きな男の背中以外に、何も無かった。


 ザザ……ザザ……


 波打つ音。


 カラダを起こして立ち上がろうとするが、足元が揺れてすぐに尻餅をついた。


「あまり動くな、バランスが崩れる」


 男の端的な声。

 波の音、暗闇、大男、揺れる足元。


「あ……」


 ぼんやりしていた視界がゆっくりと鮮明になる。頭上には月と、星空があった。

 そして、思い出す。

 俺は――

 顔に両手を当てる。指が震えて、冷たかった。


「あ、ああ……」


 髪を掴み、頭を抱える。

 そうだ、俺は――

 飛行機の破片に乗っている、助かったんだ。

 俺だけが――


「うあああああああああああああああああああ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る